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Dec 2021

ファッション業界のイノベーターに学ぶ サスティナブルな事業経営に必要なこと

ビジョンとチーム運営「仕事は私事という考え」

ビジョンとチーム運営「仕事は私事という考え」

ビジョンとチーム運営「仕事は私事という考え」

現在は、業績が堅調なファクトリエも、ずっと順風満帆だったわけではない。過去には横浜にも実店舗を展開していたが、2年で終了。ECでは海外アカウントの詐欺にあったり、需要に対し大きく在庫不足に陥ったり過剰在庫を抱えたこともあったという。

「一時期、ファクトリエの動きが鈍化した時期がありました。大きな赤字が出て、たくさん人が辞めてしまった。改めて、そこで社員である意味、チームである意味を考え、1+1が3や4になるように、社員と向き合いました」。


山田さんは、社員に、他人との関係に関してはGIVEの精神で見返りを求めないこと、自分の評価は自分自身の絶対評価によること、自分の人生は自分が決めていくことを、社員と共有した。
「雇用する上で、人生をどう歩ませようかと悩んでいたけれど、自分の人生は自分で決めてもらうことにしました。SNSが広がるほど、他人との評価で自分にマイナスをつけることが増えたけど、今の自分をもっと見つめて、自分の積み上げているものを評価するべき。考えるべきは、未来の理想の自分。他人ではない」。

「ファクトリエの最大のミッションは、全てのあらゆる人に対して『語れるもので、日々を豊かに』していくこと。僕自身はそのミッションがそのまま理想だけど、社員が自分の人生を考えた時に、違う理想を掲げるなら辞めてしまってもかまわないということを伝え、全員と面談しました」。

その他にも、社員間の交流を活性化するために、週に1度読書した本の内容や感想を共有したり、各自がビジョン達成に向けた成長設計シートを作成したり、年に一度WHY合宿などを実施したりしている。

「WHY合宿というのは、自分はなぜここにいるのか、何をしたいのか、見つかっていないなら、何が気持ちよくて気持ち悪いのかをみんなで話して、苦手な仕事は代わったり、サポートしたりするなどの共有をする場。別に夢がなくてもいいし、やりたいことがなくてもかまいません。でも嫌いなこと、苦手なことはなんとなく分かる。そういうことは、より得意な人に任せたほうがいいし、話してもらうようにしています」。

こうした活動を経て、ファクトリエでは私事を軸とした組織体制を培ってきた。ノルマは、会社ではなく各自が設定し、その目標に対してどう動かくかも各自が決める。そうすることでトップダウンではなく、ボトムアップで社員の知恵を集めていくことができる。「機械的に、経営目標や業績目標を割り振りしない。それぞれが決めるものだし、自分が決めたからには社員もやり通す。当事者意識をもってもらうことが重要です」と山田さんは話す。

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ファッション業界のイノベーターに学ぶ サスティナブルな事業経営に必要なこと

山田 敏夫

1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学しグッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。 2012年1月、ライフスタイルアクセント株式会社を設立し、同年10月に「ファクトリエ」をスタートさせる。経産省「若手デザイナー支援コンソーシアム」発起人、毎日ファッション大賞推薦委員。著書「ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす『服』革命(日経BP社/2018年)」

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