EVENT REPORT

Nov 2021

若者の感性から未来をデザインする方法(後編) ~若者起点の価値創造~

 若者のトレンドや価値観を知ることは、彼らをターゲットにしたマーケティングにおいて有効なだけでなく、未来の価値観の象徴としての若者を知ることで、企業として今後の社会に働きかけていく上でのヒントを見つけることができる。
 今回も電通若者研究部の吉田さんにご登壇いただき、前回学んだ“若者のインサイトの今とこれから”に引き続き、“若者起点の価値創造”について実践(ワーク)をまじえてレクチャーいただいた。

目の前の問題に「未来仮説」からアプローチする

目の前の問題に「未来仮説」からアプローチする

目の前の問題に「未来仮説」からアプローチする

 マーケティングにおけるターゲットとしての若者研究ではなく、未来の兆しとしての若者研究をおこなっている電通若者研究部(以下ワカモン)。電通ではその研究成果を応用し、さまざまな企業や商品・サービスのコンセプトメイクやコンサルティングをおこなっている。今回はその手法について吉田さんに紹介いただいた。

 「2021年4月にこれまで暗黙知だった我々の思考のフレームを整理して『Foresight Planning』というプランニングフレームをリリース、サービス提供を開始しました。未来の生活者の代表である若者のインサイトと、それに基づくフォーサイト(=未来仮説)から、この先の社会や人々の意識や価値観のベクトルを仮説化し、それに基づいた企業活動の企画をおこなうというアプローチです。」

 目の前の問題への対処を繰り返していると未来の視点が抜け落ちてしまいがちだ。そこで敢えて遠回りをし、若者から見える未来を経由して本質的な問題に向き合い、そこから新たなブランドコンセプトを開発するのだという。具体的なステップについては以下の通りだ。

Step1.フォーサイト構築
「電通×現役大学生×協賛企業」によるβ版共創プラットフォームβutterflyを活用し、学生のフィールドワークを基にフォーサイトを構築

Step2.コンセプト開発
フォーサイトを基に未来に通用する事業やサービスのコンセプトを開発

Step3.コンサルティング:
クリエイティブ開発や継続的なコンサルティング支援

若者の発言・インサイトを正しく解釈する

 また、『Foresight Planning』には大きく3つの特徴があるという。

❶現役大学生がテーマに基づいて実際にフィールドワークをしてレポートを提出してくれるため、Z世代当事者の生の声と彼らの目に映る「これからの未来の仮説」を相当数収集可能

❷βutterflyに所属する現役大学生とのディスカッション・ヒアリングが可能。フィールドワークレポートの解像度を上げるため、内容の詳細やニュアンスの違い、既存類似品との違い等々の確認が臨機応変におこなえる

❸電通若者研究部メンバーが若者と社会の翻訳者としてコンセプト・クリエイティブ開発をサポート

 「特に3つ目が肝ですね。学生との共創プログラムや取り組みをおこなっている企業さんは他にもたくさんありますが、同時によく聞くのは良いアイデアや成果が出ないことも多く、うまくいくかどうかも運次第だといった意見です。僕たちの場合はクライアントに大学生のアイデアをそのまま出すことはしません。集まってきたレポートを俯瞰し、そこから浮かび上がってくる共通項や未来の胎動、モメンタムがどこに仮説化できるかを学生にグループワークで議論してもらいながら、同時に僕たちもその内容を盗み聞きして彼らのインサイトを探りつつ、ワカモンがプロとして解釈・翻訳した上でつくり上げた仮説を提言します」。

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若者の感性から未来をデザインする方法(後編) ~若者起点の価値創造~

吉田 将英

㈱電通 電通ビジネスデザインスクエア コンセプター

前職広告代理店にてクライアント企業のブランド戦略立案に従事した後、2012年電通入社。社会や組織の課題をそこに関わる全ての人のインサイトと関係性に着目して解決する「関係性デザイン」を専門とする。特に若者世代のインサイト研究を得意とし、電通若者研究部のメンバーとして10~20代の若年層の心理・動向分析とそれに基づくコンサルティング/プランニングに従事。「電通若者研究所(通称ワカモン)」メンバー。
電通ビジネスデザインスクエアでは経営者のパートナーとして、企業の未来創造にまつわるプロジェクトを多数手がける。著作に『若者離れ』(エムディエヌコーポレーション)、『なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか』(宣伝会議)

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