EVENT REPORT

Mar 2017

21世紀の「旅」を考える

消費者ニーズの多様化や移動手段の進化によって変わる私たちの旅のカタチ。

これからの旅はどのような変化していくのかを考えるため、H.I.Sで20年以上にわたり様々な旅行商品を開発してきた鮫島卓さんをお招きし、イベントを開催した。

旅の価値は「想定外」にある

旅の価値は「想定外」にある

長年にわたり旅行業に携わり、多くの旅行商品を開発してきた鮫島さんいわく、「旅の価値は、『想定外』にある」という。

「旅の価値とは、現地に行って初めて感じることや期待とは違った経験をすることにあると、私は考えます。ガイドブックやパンフレットに書かれている行程だけを過ごして旅を終えるのではなく、想定外の新しい経験をすることによって、その後の自分の生活を変えていくきっかけにもつながることがあります。旅というものは、人の人生に関わっていくことができる。そこに旅の価値があると私は思います」。

こうした想いを持つ鮫島さんは、いままでの自らが企画した旅行商品を振り返った。

若者のインサイトから生まれた「日帰りバスツアー」

現在では人気の「日帰りバスツアー」。鮫島さんは10年以上前から、この日帰りバスツアーを企画し、多くの人気ツアーを開発してきた。

「当時、H.I.Sは国内旅行の分野では後発企業でしたので、他の旅行代理店が既におこなっていた電車を移動手段とした国内旅行では突出できませんでした。そこで、企画したのが日帰りバスツアーです。当初、日帰りバスツアーはシルバー世代をターゲットとして開発していました。しかし、ツアーを始めてみると、カップルや友達同士といった若者が多く参加してくれたんです」。

鮫島さんはこうした現象を見逃さなかった。日帰りバスツアーが若者にも需要があるとわかると、すぐにターゲットインサイトの分析を始め、若者向けの日帰りバスツアーの旅行プログラムを数多く企画した。

通常、旅行プログラムを企画するときには同業他社の調査をおこない差別化をはかっていくのだが、鮫島さんは若者をターゲットとした日帰りバスツアーを企画する際に、同業他社の調査は一切しなかったという。

「私たちが若者向けの日帰りバスツアーのプログラムを企画したとき、重要視したことは“若いカップルや友達同士は1日をどのように過ごしているのか”です。それは、過ごす場所だけではなく、1日で支出する費用なども細かく調べ、プログラムを設計していきました。もちろん、プログラム内容だけでなく申し込み方法についても、オンラインに切り替えたり、出発日の前日までに申し込めたりなど、若者のニーズをもとに色々と試していきました」。

こうした若者のインサイトをもとに開発された新たな日帰りバスツアーは、若者からの支持を獲得し、メディアにも取り上げられるほどのブームとなった。そして、ピーク時は1日5,000人ほどの参加者が新宿のバス停から出発するほどまでに拡大していったという。

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21世紀の「旅」を考える

鮫島卓

H.I.S.専門店グループリーダー。世界50ヶ国を旅したバックパッカーで、H.I.S.著書『世界の絶景さんぽ』編集長でエコツアー・スタディツアー・世界一周旅行・ユニバーサルツーリズム・秘境旅行などH.I.S.テーマ旅行企画プロデューサー。2006年モンゴル建国800周年事業実行委員会事務局長として官民連携のモンゴル初の国際観光イベントを企画実施、ハウステンボス再生担当として初の黒字化に貢献、ミャンマー・ブータンでJICA観光開発プロジェクトや国内での地方創生・観光振興事業に従事し、地域と共につくる持続可能な観光を推進している。

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