アートディレクター成田久の「クリエイト★の時間」
憧れていた世界を見る側から、創る側へ
「小さい頃から、歌番組に出演しているアイドルや劇場の役者さんたちのエンターテイメントの衣装にすごく興味を持っていました」。そう話す成田さんは、学生時代は美術大学に通い、アーティストを目指していたという。
そんな成田さんがなぜ、一般企業である資生堂への入社を決意したのか。きっかけは、大学院2年目の春に知った資生堂のクリエイター募集だった。
「当時、資生堂のCMに出演した人たちは、その後、歌番組やドラマなどのテレビの世界で大活躍していきました。まさにシンデレラストーリーといった世界です。僕は小さい頃から、テレビや劇場で活躍する人たちの世界観に憧れていましたので、資生堂のクリエイター募集を知ったとき、憧れていた世界を、今度は自分が創れるチャンスだと思いました」。
しかし、当時の美術大学ではいまと違い、「就職したらアーティストとしては終わり」という風潮があったと話す成田さん。
「僕も周りの美大生と同じく、アーティストの道を歩もうと決めていたので、凄く悩みました。けど、“もしかしたら今回のチャンスはもう訪れないかも”という想いと、“自分のクリエイションをお金に変えていきたい”という想いが僕のなかで勝りまして、資生堂のクリエイティブディレクターの門をくぐりました」と話す。
そしてこの決断によって成田さんは、小さい頃に憧れていた世界を創る側の人となった。
今回のイベントでは、成田さんがこれまでに手掛けた事例をもとにして、成田さん自身の発想方法や仕事の進め方を学んでいった。その一部を紹介しよう。
一つのアイディアには固執しない
「僕はクリエイティブに取り掛かるとき、一つのアイディアに固執せずに、たくさんのアイデアを出していきます。仕事をうけた段階から、アイデアを出すための時間を作ろうと、必ず決めているんです。そして、その決めた時間内で、できる限りのアイデアを出していきます。アイデアをたくさん出すのが好きなんです。浮かんできたことはすぐにノートに書いたり、電車に乗っているときは、ひたすらスマホに打ち込んだりと」。
このように成田さんがクリエイティブに取り組む際にアイデアをたくさん出すのは、「相手と一緒になって創っていける」という考えがあるからだという。
「相手に僕のアイデアを押し付けるよりも、どういったものが求められているかを理解しながら、自分のクリエイティブを表現していくほうが好きなんです。たくさん選択肢があった方が相手も理解しやすくないですか。ただ、自分が『これは、違うな』と思っているアイデアが採用されるのも嫌なので、なぜこのアイデアなのかをちゃんと自分自身が説明できるものしか見せません」。
ブランドイメージを届けるためには分業はしない
「僕は、アートディレクターという立場なんですが、分業はほとんどしません。企画やクリエイティブを考えた人自身が、ちゃんとアウトプットまでおこなっていった方がいいと思っているからです。僕は自分の仕事を『ブランドイメージを作っていくこと』だと思っています。ポスターの企画から店頭ツール、WebサイトやSNSの文章にいたるまで、お客様に発信することは全てブランドイメージの形成に関わることなので、なるべく全てに携わるようにしています。お客様が商品を手にした時に、広告のイメージと合わないなんてことが無いようにするのが、自分の仕事でもあると思っています」。
アートディレクター成田久の「クリエイト★の時間」
成田 久
アートディレクター・アーティスト。多摩美術大学・東京藝術大学大学院を修了し、1999年資生堂入社。宣伝・デザイン部に所属。アネッサのCMで蛯原友里を起用し、楽曲にBONNIE PINK「A Perfect Sky」を使用したことで一躍話題に。そのほかマシェリやマキアージュ、unoなど多彩なブランドのアートディレクションを担当。更にTSUBAKIで初めて男性キャストとして福山雅治を起用するなど、資生堂商品のブランディングに大きく貢献する。
-成田 久cueのププププレゼン力
https://www.alphapolis.co.jp/business/entry/47/
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