人とロボティクスの未来
AI×ロボットによる新たなマーケティング手法を探る
ロボットの種類と応用分野
一口にロボットといっても、その種類や用途は多岐にわたる。産業用ロボットに協働ロボット、コミュニケーションロボットは車輪で動くものや二足歩行のもの、人そっくりのアンドロイド型などがある。スマートスピーカーも見方によってはロボットと呼んでも差し支えなく、他にもテレプレゼンスロボットやドローン、モビリティロボットなどなど、実に様々なタイプがある。
「この中で本日お話ししたいのが協働ロボットです。出力が大きく、接触すると危険な産業用ロボットとは違い、人と一緒にいても安全に動くロボットであり、基本的にアームのサイズは50cm~1mくらいまで、何か役に立つ仕事をしてくれるロボットのことをいいます。通常は製造ラインでのねじ止めや組み立て、挿入、物流ラインでのピッキングや仕分けをおこなったり、食品工場での包装や、検査工場で不良品をはじくといった作業のために使われていますが、我々はこれをサービス業でも使うことにトライし始めています」。
ここで実際に会場に持ち込んだ協業ロボット「Sawyer(ソーヤー)」のデモンストレーションを見せてくれた。アーム型ロボットにタブレットで顔をつけたSawyerは、ダイレクト・ティーチングという機能を備えている。ロボットに動作を覚えさせることをティーチングというが、ダイレクト・ティーチングはロボットの手を持って動かすと難しいプログラミングを行わなくてもその動作をロボットが記憶できる仕組みで、実際にやってみるとたしかにその通りに動いた。
「通常の産業用ロボットは位置制御といって、工場の溶接などでも特定の場所に対象物がある前提でプログラミングされた動作をトレースするのですが、Sawyerの場合は腕の先端についているカメラで対象物を認識して動くので、対象物が多少ずれてもきちんとその対象物に対して決められた動作を行うことができます。安全性に加え、こういった使いやすさや柔軟性を備えているという点も、我々がロボットをサービス業にも使えるのではないかと考えて応用している理由の一つです」。
製造業からサービス業へ、協働ロボットの拡張
協働ロボットをサービス業に転用した具体例として、情報システム部門の責任者として中野さんが3年ほど前に携わっていたハウステンボスの取り組みについて話してくれた。
ハウステンボスは非常に特殊な土地で、ホテルや店舗、発電所、野菜工場、バス、船といったあらゆるインフラを詰め込んだ一つの町として設計されている。
「そこで『変なレストラン』と『変なバー』というロボットによる飲食店をつくり、お好み焼きを焼くロボットやバーテンダーのロボット、人に追従しながら空いた皿を運ぶ台車ロボットなどを試しました。ビュッフェ形式のレストランのため、済んだ皿を片付ける必要があったのですが、台車ロボットにタブレットで顔をつけて『お済みのお皿は僕の背中に乗せてください』としゃべらせるようにしたところ、スタッフの後をついていくだけでお客さんが喜んで皿を置いてくれ、お客さんを使いながら皿を片付けることができました。そこで、他にもチャーハンをつくるため高速回転させる機器やドーナツをつくる機器にも同様にタブレットで顔をつけてしゃべらせるようにしました。そこで分かったことは、鍋であろうとなんであろうと顔をつけてしゃべらせれば、なぜか人はそれをロボットと認識するということでした」。
先ほど紹介したSawyerも渋谷のMODIというファッションビルにあるカフェで実際に飲み物をつくって提供している。その名も『変なカフェ』。ここでの一連の動作もダイレクトティーチングで覚えさせたもので、人件費が一切かからないため一年半前のオープンから現在までの収支は黒字だという。
「Sawyerに限らず、協働ロボットは人と共に働くために様々な機能がついています。そこにコミュニケーションの機能を持たせて現場で働けるようにすることで、みなさんが思っている以上に色々なことができるのです」。
人とロボティクスの未来
AI×ロボットによる新たなマーケティング手法を探る
中野 浩也
株式会社QBIT Robotics 代表取締役社長/CEO
三菱重工業入社、その後、国内最大手のSIer勤務後、
ソフトウェア開発会社やクラウドサービス提供会社などを設立。
直近ではハウステンボスの情報システム部門責任者として「変なホテル」、変なレストラン」の運営に携わる。現職では、QBIT Roboticsの最高経営責任者として、陣頭指揮を執る。
広屋 修一
株式会社QBIT Robotics 取締役/CTO
NECにてソフトウェアの研究開発に従事(途中Stanford大学客員研究員も経験)。NEC子会社や電通子会社等で約10年間代表取締役を務め、デジタル・マーケティングに精通。
自宅では8台のロボットと暮らす、大のロボット好き。現職では、QBIT Roboticsの開発部門を牽引し事業戦略を実行する。
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