EVENT REPORT

Jan 2020

SDGs達成に向けて
~官民連携でつくる社会環境~

SDGsの取組はCSRの範囲内に留まらず、持続させていくための事業を模索していかなければならない。また、こうした取り組みは企業単体で終わらせることなく、官民連携など幅広いステークスホルダーとともに協力して持続可能な社会環境をつくっていく必要がある。
今回のWAOでは、農林水産省の林野庁林政部木材利用課長、長野麻子さんをお招きし、同省の分野におけるSDGsに関連する課題や実情、取り組みなどをお話ししいただくことで、課題そのものを理解するとともに企業がどのような形で関わっていくことができるのかを考えた。

フードロスへの取り組み

フードロスへの取り組み

フードロスへの取り組み

SDGsは持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成された2016年から2030年までの国際目標だ。2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択され、日本でも多くの企業がSDGsへの取り組みをおこなっている。その中で今回は、長野さんがこれまで取り組んでこられたフードロスと木材利用についてお話しいただいた。

「フードロスは、SDGsでは目標12“つくる責任つかう責任”に該当し、2030年までに小売・消費レベルで一人あたりの食糧廃棄を半減させ、サプライチェーン全体で食品ロスを減少させる、という具体的な目標のもとに取り組まれている課題です。その中で、日本は世界中から食べ物を輸入していながら大量に廃棄しているという現実があります。推計では年間643万tが廃棄されていて、これは一人当たりでは年間51kg、1日約139gになります。1日でお茶碗1杯分を廃棄している計算です」。

フードロスは様々な事業者と一般消費者が関与する問題だが、農林水産省、ひいては政府・中央省庁ではどのような取り組みがあるのだろうか。長野さんは、数ある取組の中から賞味期限に関する商習慣の見直しについて教えてくれた。

「食品製造業と卸売・小売業の商習慣で、“製造日から賞味期限までを3等分し、卸売業者、小売業者、家庭がそれぞれ3分の1の期間をもちあう”(いわゆる3分の1ルール)というものがあります。例えば賞味期限が6か月の商品の場合、小売業者は賞味期限が4か月を切ったものは受け取らないし、小売業者も賞味期限を2か月残して廃棄するということです。これはつまり、我々一般消費者が知らないところで、まだ賞味期限が4か月残っている商品が販売されることもなく廃棄されてしまうことを意味します」。

製造業者も、卸売・小売業者も、それぞれ自社で発生するロスについては製造効率の見直しやリサイクルといった形の企業努力で食糧廃棄の減少に取り組んでいるが、一方でこうしたサプライチェーン全体で取り組まなければ解決できない課題も非常に多いという。

「そこで食品企業を所管している農林水産省が旗を振り、フードチェーンに関わるすべての事業者に集まってもらって、サプライチェーン全体でこの商習慣の見直しを実践しました。実験的に、賞味期限が6か月以上ある飲料とお菓子で納品期限を3分の1から2分の1に見直したところ、廃棄される量が見事に減りました。その結果、コンビニエンスストアを展開する8社すべてが店舗での納品期限を見直しました。今後はそういった品目を拡大していこうと考えています」。

これ以外にも、例えば賞味期限が3か月以上になるものは年月のみの表示にすることで管理コストを削減したり、賞味期限そのものを延長できないか見直したり、日本気象協会と連動して気象情報を基に需要予測を立てる実証実験をおこなうなど、業界全体や異業界を巻き込み、官民連携で社会環境の変革を推進している。

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SDGs達成に向けて
~官民連携でつくる社会環境~

長野 麻子

農林水産省 林野庁 林政部 木材利用課長

1994年東京大学文学部フランス文学科卒業後、農林水産省入省。バイオマスをカスケード利用する国家戦略策定に携わった後、(株)電通に出向してソーシャルビジネスの企画、食料産業局食品産業環境対策室長としてフードロス削減に向けた国民運動を手がけるなどして、2018年7月から林野庁木材利用課長に。公共建築への木材利用、木づかい運動、木材輸出など木材需要の拡大に向けて全国営業中。

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