EVENT REPORT

Jan 2020

今、モノづくりの価値をあらためて考える

モノ消費からコト消費への変動が起こって久しい昨今。顧客の求める価値も多様化し、これまでの大量生産・大量消費のモノづくりに対し、疑問や不安を抱き始めている人々も増えているのではないだろうか。

今回のWAOでは、LEDコードレスデザイン照明の企画・デザインから製造までを手掛け、世界最大規模のインテリア見本市「ミラノサローネ」への出展や、グッドデザイン賞の受賞などで注目を集めている株式会社アンビエンテックの代表取締役社長、久野義憲さんに登壇いただいた。

久野さんにモノづくりをする上でのこだわりや大切にしている考え方などを伺いながら、これからのモノづくりの在り方について考えていった。

フィルムからデジタルカメラの時代へ

フィルムからデジタルカメラの時代へ

久野さんは地元名古屋の大学を卒業後、DPEショップチェーンを展開する企業に入社。初めは店舗の店長やフランチャイズ店の開発などを手掛けていたが、25歳から3年ほど駐在した香港で初めてモノづくりの世界に触れ、興味をひかれていった。そして1999年、エーオーアイ・ジャパンを立ち上げた。

独立当初は、中国の工場で既存のカメラを改良してノベルティやキャラクターグッズをつくって輸入・販売するビジネスをしていた久野さん。しかし当時は、インターネットの台頭や、カメラがフィルムからデジタルに移行し始めた時代であった。久野さんは、デジタルカメラの時代でも生き残れるモノづくりはなにかと考え、ハウジング(ダイバーが水中で写真を撮るためのカメラ専用の防水ケース)の製造に舵を切ったという。

「当時全く無知だった私は、ただ防水だけすればいいと思い、自分で500万円ほど投資して初めてハウジングをつくったんです。ところが使ってみたら水圧でボタンが押せず大失敗。でも同時に面白い世界だなと思いました。水を防ぐというだけでもハードルが高いのに、加えて塩水というとてつもなくアタック性の強いものに耐え、水圧にも耐える・・・それってある意味究極なんじゃないかと思って、この世界で使えるような道具をつくりたいという欲求が出てきました」。

再投資をおこなって製造したデジカメ用ハウジングは前回の失敗を活かして無事に完成し、多くのダイバーに使われるようになった。そこから様々なカメラメーカーのOEM製品を手掛けるまでになったという。

「デジカメが主流になっていく波に乗れたのでビジネスとしては好調でした。でも当時デジカメは、力の強い量販店にどんどん下げられてしまう値段を戻すために、約半年に一度という異常に速いサイクルで、しなくてもいいマイナーチェンジを繰り返していました。要は流通主導の売り方にメーカーが振り回されていた時代だったんですね。ありがたいことに仕事としては忙しかったですが、現場も疲弊していましたし、やっていることに疑問を感じながらモノづくりをしていました。この頃から僕は商品のライフサイクルや売り方に疑問を感じるようになっていきました」。

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今、モノづくりの価値をあらためて考える

久野 義憲

(株)アンビエンテック 代表取締役社長

1969年愛知県名古屋市生まれ。愛知大学卒業後、㈱プラザクリエイトに入社。香港駐在、フィルム映像のデジタル化に向けた新規事業等に関わる。
同社を退職後1999年に設立した㈱エーオーアイ・ジャパンで水中撮影機材のOEM事業を大手カメラメーカー向けに開始。2009年には㈱アンビエンテックを設立し、コードレス照明ブランドとして製品展開を始める。
現在は水中撮影機材で培った独自の蓄電式LED制御技術と防水技術を強みとして、ダイビング用水中ライトの“RGBlue”、インテリア照明ブランドの“ambienTec”という対極ともいえる業界で本格的照明機器のグローバルブランドを目指すことをライフワークとしている。

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