EVENT REPORT

Sep 2019

発達障害を知る
~“障害のない社会”の実現に向けて~

2016年の発達障害者支援法の改正によって、「発達障害者への支援は社会的障壁を除去するために行う」という理念が追加され、社会全体での発達障害者のある人への支援が強化された。しかし、こうした法制度が進む一方で、私たちは発達障害について正しく理解しているだろうか。

そうした背景から今回は、「障害は人ではなく、社会の側にある」という考えのもと、多様な人が幸せになれる社会を目指して事業をおこなっている株式会社LITALICOの鈴木悠平さんをお招きし、イベントを開催した。発達障害と、発達障害のある人が抱える特徴・困りごとを知ると共に、発達障害の課題解決に向けて企業として取り組めることがなにかを考えていった。

障害とは、個人と環境の相互作用によって困難が生じてしまうこと

障害とは、個人と環境の相互作用によって困難が生じてしまうこと

障害とは、個人と環境の相互作用によって困難が生じてしまうこと

鈴木さんはイベント冒頭、障害について次のように定義した。

「障害のある人への研究や支援の現場では、そもそも障害というのは、個人の側の要素と周囲の環境との相互作用によって生まれもするし、逆になくしていくこともできるという考え方が基本的には主流になっています」。

これは“障害の社会モデル”と言われ、一般的に、不便や困りごとは個人の特性と、周囲の人や場所、法律や道具など個人を取り囲むすべての環境との相互作用によって発生することを意味する。

「健常者と呼ばれる人に比べ、日常的に困ることがすごく多い人たちが、今この現時点で切り取った社会の中で『障害者』とカテゴライズされているんです」。

発達障害は、自閉症スペクトラム、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)の3つの類型に大別されるが、個人の特性と周囲の環境がうまくかみ合えば才能として発揮できる場合もある。

例えば自閉症スペクトラムの人の中には、細かく丁寧に一定の速度で作業ができる人がいる。場所や時間、ルールをあいまいにせずに “この状況のときはこうする”と具体的に整理し、本人にわかりやすい形で決めることで、その特性を発揮できるようになることもあるのだ。

「発達障害というと、いろんな困りごとがクローズアップされがちですが、ずっとその状態にあるわけではなくて、まさに個人と環境のかみ合わせです。適切な環境を用意できれば、いきいきと活躍できるようになるのです」。

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発達障害を知る
~“障害のない社会”の実現に向けて~

鈴木 悠平

株式会社LITALICO 社長室チーフエディター、NPO法人soar 理事。コロンビア大学大学院 公衆衛生 保健政策専攻 修士。
1987年生まれ。一人ひとりが<わたし>の物語を紡いでいける社会を目指して、執筆・編集業を中心に活動。現在は、株式会社LITALICOおよびNPO法人soarでの事業運営や文筆活動を通して、障害や病気、その他さまざまな要因で生きづらさを感じている人たちとかかわりながら、 人が物語を通して回復していくプロセス、<わたし>と<あなた>の物語が響き合うなかで新たな希望が見出されるプロセスの探求、伴走、創出をこころみている。
株式会社LITALICO:http://litalico.jp/

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