~「不登校」は何が問題なのか?~
不登校の予防薬「おはなしワクチン」
学校へ行かなくても、きちんと子どもは育つのか
学校以外の教育とは、どのようなものなのか。蓑田さんは、教育選択肢「オルタナティブ教育」のひとつ、「サドベリー教育」について説明をしてくれた。
サドベリー教育は、1968年にアメリカのボストンで始まった、デモクラティックスクールの一部である。現在、世界中に約40校、日本には10数校、存在する。サドベリー教育の特徴は、「何をやってもいい」ことにある。そこには、先生もいなければ、カリキュラムもない。唯一のルールは、「みんなで決めたルールは守る」ことだけである。
サドベリースクールに通う子どもたちは、友だちと会話をしたり、ゲームをしたり、読書や工作、街に出る子もいるという。子どもたちは何をしても自由であり、誰からも指図されることはない。
なぜ、このようなオルタナティブ教育が必要なのか。その背景には、「時代の変化がある」と蓑田さんはいう。
先生や親の言うことを聞き、知識を身に付けてさえいれば上手くいく時代は終わり、世界の価値観が多様化し、未来の成功モデルを誰も予測できない時代となってきた。このような時代に必要とされるスキルは、自分に自信を持つ「自己肯定力」や、自分が進む方向を認識する「自己構築力」、そしてそれを行動に移す「自己行動力」といった、「生きる力」なのではないだろうか。この力を身に付けることが、これからの教育にとっても重要なテーマではないかと、蓑田さんは語る。
人生を子どもに手渡す覚悟があるか?
「子どもの人生は、子どものものであり、子どもの人生の責任は、子どもが取るべきです」。
蓑田さんがこのように考えるようになった背景を話してくれた。蓑田さんのお子さんは、サドベリースクールに通い始めた当初、スクールでも家でも、1日中ゲームをしていたという。しかし、サドベリー教育上、親を含めて誰も注意も指導もしない。
「さすがに最初は、これでいいのかと、ものすごく悩みました。でもある時ふと気付いたのです。ゲームをし続けて困るのは、子ども自身だ、と。発見でした」。
「勉強をしなくて大丈夫なのか?」という考えは、裏を返せば「勉強をすれば大丈夫」ということにもなる。しかし、未来は誰にも分からない。分からない以上、自分の今の行動の先にある自分の未来は、自分が責任を負わなければならない。
「今の学校教育では、そのことに子どもが自覚を持たないまま、生きているように感じます」と蓑田さんは語る。「自由と責任はセットであること」、「生きていくのは自分であること」を気付かせることが、サドベリー教育だという。このことは、教わるものではなく、自分で気付かなければ、意味がないと蓑田さんはいう。
「サドベリー教育を選択した親は、『人生を子どもに手渡す覚悟があるか』ということを、試されます。しかしこれは、全ての親に共通して言えるのではないでしょうか」。
~「不登校」は何が問題なのか?~
不登校の予防薬「おはなしワクチン」
蓑田 雅之
コピーライター/一般財団法人東京サドベリースクール外部理事
早稲田大学第一文学部卒業、コピーライター。「東京サドベリースクール」の元保護者、現在は外部理事。
子どもがオルタナティブスクールに通うようになり、従来の学校教育のあり方に疑問を持ち、教育分野の研究に着手。自立した人間を育てるための保護者のあり方を探究する活動を行っている。
各地で開かれるお話し会で「サドベリー教育」について講演し、多様な学びを広げる活動を行っている。目標は「不登校」という言葉をこの世からなくすこと。
ブログ「おはなしワクチン」 https://ohanashivaccine.wordpress.com/
一般財団法人東京サドベリースクールWebサイト http://tokyosudbury.com/
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