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Jan 2020

数字では計れない価値を届けたい

久野 義憲( 株式会社アンビエンテック 代表取締役社長 )

単純に比較できない“圧倒的な価値”の追求

久野さんはどういうことを意識してモノづくりをされていますか?

久野さんはどういうことを意識してモノづくりをされていますか?

多くのメーカーが細かなスペックで競い合い、世の中に似たようなものが溢れています。消費者も購入前にネットでスペックを比較することが当たり前になっていますが、僕はそこで競おうとは思わない。代わりに“この製品ならちゃんと使ってくれるお客様がいる”という確信が持てる圧倒的な価値のあるものをつくりたいと思っています。

実際アンビエンテックの製品は、全てガラスや金属など、劣化しない、もしくは経年変化が味になるような素材だけを使っていてプラスチックはできるだけ使用しないようにしています。

最低でも10年は使えるロングライフの製品ということにもこだわり、持った瞬間に重みや感触を感じられ、「大事に長く使いたい」と思ってもらえるような、スペックでは表せないところに手間をかけているので、実際にお客様に手に取ってもらえる実店舗に置くことも意識しています。

今の世の中の大量生産大量消費のモノづくりとは真逆で、手間をかければ、どうしても高めの価格帯になってしまいます。初めは誰がどこで使うのかなと思いながら、自分が欲しいものをつくっていました。でもいざ出してみて、自分と同じようなことを求めているお客様が意外といるんだということが分かりましたね。

以前ご登壇いただいたイベント(https://wao-koishikawa.com/reports.php?rid=67)で、「モノづくりには誠実さと高い意識を持つことが必要」と話されていましたが、今の話もそれに通じるのでしょうか?

そう思います。お客様に「こんなつくりのものは見たことがない」「使ってみたい」と思ってもらえるような製品をつくることはとても大切だと思っています。それはつまり、今までになかった価値を創造するということで、誠実さと高い意識がないとできないことだからです。

製品を通して「モノに対する考え方や使い方とは、本来こうあるべきではないですか?」という一歩先を行く提案をお客様に対して届けることで、驚きを与えたり、その人が知らなかったり気づいていない世界を体験させてあげる、見せてあげることができるモノづくりを続けていきたいですね。

誠実さと良心のあるビジネスを

今後のビジネスにおいて大切だと思うことがあれば教えてください。

これからはお金以外の、つまり経済活動以外の価値というものを考えてビジネスをしていくことも必要なのではないかなと思います。

本当はAの方の“考え方”が良かったとしても、数字だけでものごとを見てしまうと必ずしもAが選ばれずにBが良しとされてしまうことが往々にしてあると思うんです。たとえば、値段は少し高いけれど無農薬で育てられた傷のある野菜よりも、大量の農薬と防腐剤を使った見た目がいつまでも変わらない外国産の野菜の方が売れるからいいのかということ。

数字だけで良し悪しを判断してしまったら、その分野はもう本当に良い形では成り立たなくなってしまう。環境なんて特にそうです。要は良心ですよね。モノづくりに限らずビジネスには誠実さと良心がないといけないと思う。でもそれって突き詰めていくとごくごく普通のことで、特別なことでもテクニックがいることでもない。

根本に立ち戻るということですね。お客様にそういうことまできちんと明示した上で、ある商品は1億円、もう一方は1千万円しか儲かっていないという時に、誠実さと良心で1千万円の方を選択する判断ができる企業が、これからの世の中では選ばれ、生き残っていくのではないかと思っています。

ADVISE

自分の欲求と問題解決を結びつける

自分の欲求と問題解決を結びつける

数字では計れない価値を届けたい

最後に、久野さんに新事業創出において大切なことは何か伺った。

「まずは自分がどうしたいのか、何をしたいのかという純粋な欲求や動機といった原動力は絶対に必要です。次に、それをプロダクトやサービスにして表に出す時に考えた方が良いことは、それが何らかの問題を解決できるものであるかということ。それがないとただの自己満足でしかなく、そのものをつくる意義もないし価値も上がらない」。

久野さんは、“なにかをしたい”と思うきっかけは意外と身近なところにあると話す。

「普段の生活の中で、まだまだ足りないものとか不満を感じることはたくさんありますよね。たとえば僕の場合、海外出張で石畳を移動する時にスーツケースのキャスターがガタガタうるさいなと感じます。そこから、音がガタガタいわない、振動が伝わりづらいスーツケースがつくれないかな、といった具合です。そういう小さなことからでもいいんです。まずは自分がそれをどれだけ必要と思えるか。あとはその欲求を欲求で終わらせずに、どうビジネスにするか。そのためのポイントが、自分以外の人たちにとっての問題解決にもなるということだと思います」。

アンビエンテック立ち上げ当初に販売した環境配慮型製品は失敗に終わったが、その後、東日本大震災などもあり、災害時に役立つものをつくりたいという気持ちはずっと残っていたという久野さん。

現在手掛けているアンビエンテックの製品はコードレスで長時間使用できるため、表向きには打ち出していないものの、結果的に久野さんがずっと思い描いていた、災害時に役立つプロダクトになっている。

「とはいえ会社ですから、数字以外の価値だけではなく経済活動ももちろん必要です。僕もOEMの仕事がなかったら、おそらくアンビエンテックの仕事はできなかった。経済活動もしながら、そこで実現できないことを実現する場所を自らつくっていくことが大事なのではないでしょうか」。

<Jan.2020 鈴木 潤子(WAO事務局)>

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PROFILE

久野 義憲(株式会社アンビエンテック 代表取締役社長 )

1969年愛知県名古屋市生まれ。愛知大学卒業後、㈱プラザクリエイトに入社。香港駐在、フィルム映像のデジタル化に向けた新規事業等に関わる。
同社を退職後1999年に設立した㈱エーオーアイ・ジャパンで水中撮影機材のOEM事業を大手カメラメーカー向けに開始。2009年には㈱アンビエンテックを設立し、コードレス照明ブランドとして製品展開を始める。
現在は水中撮影機材で培った独自の蓄電式LED制御技術と防水技術を強みとして、ダイビング用水中ライトの“RGBlue”、インテリア照明ブランドの“ambienTec”という対極ともいえる業界で本格的照明機器のグローバルブランドを目指している。


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