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Apr 2019

自分たちが納得できる未来を 自分たちでつくっていく社会に

加藤 千晃( ライフリテラシー  代表 )

2006年から8年間、企業の管理部に勤務していた加藤千晃さん。仕事の中で税金や社会保障に関する知識を学べば学ぶほどその複雑さに驚くようになったという。しかし、そうした知識や情報は生きていく上で非常に重要であるにもかかわらず、これまで学校でも会社でもきちんと教えられることはなかった。約1年間の制作期間を経て、複雑で重要な日本の社会保障と税に関する制度をわかりやすく学べる「入門!ライフ・リテラシーゲーム」が2015年に完成。現在は教育機関への出張授業や社会人向けのセミナーをおこないながら、家庭用ゲームのほか、30~40代の子育て世代やシルバー世代など、ライフステージごとに必要な情報を盛り込んだ年代別ゲームの開発など、アプリ化やデジタル化も視野に入れながら活動している。

※加藤さんがイベントに登壇した際のレポート記事はこちら↓
https://wao-koishikawa.com/reports.php?rid=58

何より大切な“人の命”を守れるゲームを

ライフ・リテラシーゲームを開発しようと思ったきっかけについて教えてください。

ライフ・リテラシーゲームを開発しようと思ったきっかけについて教えてください。

もともとは企業の管理部に勤めていた時に、誰も教えてくれない難しい社会保障制度のことを、わかりやすく学べるものがあったらいいのにと思ってゲームの構想を考え始めました。また、既に立ち行かなくなっている日本の社会保障制度に対し、「一部の専門家に任せてうまくいっていた時代はとうに終わっていて、これからは皆で考えなければ結論や答えにたどり着かない時代になっているのではないか」という疑問も感じていました。

ただ、“考える”ためにはまず今の社会に“興味”を持って“知る”必要があります。その入り口として、もともと考えていた「社会の仕組みを学べるゲーム」は、社会全体や未来について考えられる人を育てることにもつながるのではと思ったんです。

そこから一気にゲームをつくっていったわけですね。

いえ、構想だけで、実際はしばらく悶々としていました。というのも、自分の手によって、世の中の困っている人たちへ解決策となるものを提示できるかもしれないと思いつつ、自分でそれを形にできる自信は全くなかったからです。そのため誰かにつくってもらうという発想しかなく、企画書を色々なところに送っていたのですが、どこも見つからず。実現は難しいという想いと諦められない想いとの葛藤が4~5年続きました。

その状態から動き出したのはなぜだったのでしょうか。

その状態から動き出したのはなぜだったのでしょうか。

2014年3月に起きた富士見市ベビーシッター事件※がきっかけです。
※シングルマザーだった母親が仕事に行く間、インターネットでみつけた格安ベビーシッターの男性に子どもを預けていたところ、そのシッターにより子どもが殺害されてしまったという事件。

私は常々、「この世に人の命より大切なものはない」ということを強く思ってはいましたが、それまではテレビや新聞で痛ましいニュースを目にしてもただ心を痛めているだけで実際自分には何一つできることがありませんでした。しかしこの事件で、子どもの母親が、申請すれば受け取ることのできた「児童扶養手当」の存在を知らなかったという事実が私の意識を変えました。

彼女が子どもを預けて働くことで得られた給与は、その手当とほぼ同じ金額だったのです。もしもその制度のことを知っていたら、子どもはそのシッターに預けられることもなく死ななかったかもしれません。その時、私がずっと思い悩んでいたゲームの開発は私がこの世で一番大切だと思う“命”を救うことにつながるのかもしれないと思いました。いままで心を痛めるだけで何もできなかった私に、「これならできる!これが自分にできることなんだ!」という強い想いがそこで生まれました。

困難にぶつかる度に試された自分の覚悟

加藤さんにとって“信念”とは何でしょうか。

“何があっても必ずやり遂げる覚悟”です。私の場合は、「このゲームは人の命を守るものなんだ」、「それが自分のずっとやりたかったことなんだ」と思えたので、必ず世の中に送り出すんだという覚悟を持って進めてくることができました。

ただ、進み始める前は少し悩みました。世界には紛争地域で亡くなる人もいれば、食糧難や保健衛生の問題で亡くなる人たちもいる。ゲームの開発を選んだら、そうした課題への取り組みはできなくなるけれど本当にいいのかと。でも私のゲームを通じて知識を持つことで守られる人たちが、将来世界のそうした人たちの命を救う仕事に就くかもしれない。巡り巡って、自分がゲームをつくることは間接的に多くの人たちのためにもなるかもしれないと思ったら納得できたんです。ゲームをつくることが全ての入口になるんだと思えました。

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PROFILE

加藤 千晃(ライフリテラシー 代表)

2006年より8年間、企業の管理部に勤務。労務・税・社会保障制度の知識の重要性を痛感し、ゲーム教材の構想を練る。
社会生活を送るうえでの基礎知識「ライフリテラシー」を提唱し、2014年12月「ひらつかフレッシュビジネスコンペ」にて事業認定。翌年、教材「入門!ライフ・リテラシーゲーム」開発。現在は教材販売・レンタルの他、教育機関や企業向けの出張授業、セミナーなどを行っている。

ライフリテラシーHP:
http://life-literacy.com/


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