EVENT REPORT

Dec 2016

獣害被害をビジネスに変える

家庭で根付くジビエを目指す「GIBIER CAN」

家庭で根付くジビエを目指す「GIBIER CAN」

家庭で根付くジビエを目指す「GIBIER CAN」

「イノシシやシカをよく食べる人はいますか?」。

河合さんの質問に対して、会場は静まる。

「そうですよね。牛や豚、鳥といった畜産の肉が流通のほとんどを占めるなかで、都会でイノシシやシカなどのジビエを食べる人はあまりいないと思います。そして、そもそも家で食べないものが文化として定着することは難しいと思います」。

河合さんは活動をおこなっていくなかで、以前から獣害被害といった課題や狩猟肉文化の再生について取り組んでいる人たちと出会うこととなる。

同じ志を持った人たちと話し合うなかで、家庭でジビエを美味しく食べられる方法を導き出し、ジビエを身近にしていかないと、食文化としては浸透していかないのではないかという問いを持つことになる。

そこで、河合さんたちが手掛けたのが家庭でも楽しめ、保存のきく缶詰「GIBIER CAN」の商品開発だ。

「狩猟文化の浸透のため、家でもジビエを食べて欲しいとの願いから6種類の『GIBER CAN』を商品開発しました。ただ、それだけでは目的は達成できないと思い、僕たちは調達から調理、製造、缶詰め作業、シール貼り、箱詰めまでを全て地域でおこなうために工場をつくりました。こうした取り組みをおこなうことで、地域に狩猟肉を食用として流通させるためのナレッジやスキルが生まれ、さらには雇用が生まれていくことで、地域が活性化してほしいという想いがあります」。

また、製造された「GIBER CAN」は河合さんが所属するアクタスを中心とした販路で販売され、好評を博している。2016年12月にはアジアのパッケージデザイン賞「Topawards Asia」にも選出され、プロダクトとしても注目されるほどになった。

廃棄物までも資源に変える

廃棄物までも資源に変える

廃棄物までも資源に変える

次に河合さんたちがはじめたプロジェクトは、食肉利用の際に産業廃棄物としてお金を払い捨てていた皮の再利用であった。こうした産業廃棄物の費用は、結果として食肉としての価格をあげてしまい、作業効率もよくないことから、狩猟肉を広げていくための一つの課題だったのだ。

食用として処理した動物の皮はバクテリアに浸食されてしまうため、捌いてすぐに塩で処理をしなければ、市場でAランクと呼ばれている皮革にはならない。しかし、この処理は費用がかさみ、結果として、食用で扱う動物の皮からAランクの皮革をつくるのは高額となってしまい、流通での取り扱いが難しい商品となってしまいっている。

「最初、僕たちもAランクの皮革を使って商品開発をしました。結果、約40万円のバッグと約10万円の靴ができあがりました。この金額では、つくったはいいが売れません。そこでアクタスのアパレルで培った商品開発スキルを活かしBランクの皮革を開発しました。ただ、このBランクの皮革の製造も難しく、何回も失敗を繰り返しながら、やっと一つの製品が生まれました。それがこのエプロンです」。

シカの皮革の一部を使用したエプロンは、ハンティングべストをイメージし商品開発したという。河合さんは食肉だけでなく、こうした皮までも有効的に活用していくことで、環境や地域課題を考えていけるきっかけを広めていきたいと話す。

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獣害被害をビジネスに変える

河合祥太

株式会社アクタス 飲食開発責任者(レストランSOHOLM運営責任者)。大手外食チェーンのエリアマネージャーを経て、2014年にアクタスが飲食事業部を立ち上げる際に入社。現在はアクタスが運営する東京・天王洲のレストラン「SOHOLM」の運営をはじめ、地方と共同でつくるジビエの缶詰や、スモークオイルの開発など、他にない商品を企画する。日本各地の食の産地を飛び回り、地方創生や食文化の発掘、開拓にも積極的に取り組む。
SOHOLM(http://www.soholm.jp)

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