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Jan 2020

今、モノづくりの価値をあらためて考える

オリジナルブランドの立ち上げと苦悩

オリジナルブランドの立ち上げと苦悩

そんな折、2008年に起きたリーマンショックでメーカーから受けていたOEM生産がキャンセルになるという事態が起こった。この時久野さんは、社会情勢や取引先の状況によって自社のビジネス状況も一変するということを身にしみて感じたそうだ。

「この先、もしお客様が『もうデジカメはやらない』となったら、自分も仕事がなくなってしまう。それでいいのか、はたまたモノづくりを続けていきたいのか自問自答しましたが、やはりモノづくりがしたいという想いは変わらなかった。そこで、デザイン家電に環境やエネルギー、健康などの問題に寄与できる要素を取り入れた、新しいプロダクトを未来に向けてつくろうと、OEM事業とは別にオリジナルブランドの製品を扱う会社として2009年にアンビエンテックを設立しました」。

この頃、既にロングライフの製品をつくりたいと思っていた久野さんは、比較的値段を保ちながら製品を展示して販売をおこなうライフスタイル系のショップをチャネルに選び、ポータブルな太陽光発電のソーラーファンや、CO2モニターなどをつくって販売。当初、売れ行きは芳しくなかったが、2011年の東日本大震災で話題になり、売上が急激に伸びた。しかし、それも半年ほどで終わってしまったという。

「この時、あれだけのことがあっても人の関心は半年しか続かないということ、そして環境意識に対して人はお金を払わないということがよくわかりました。太陽電池を設置している人も、売電できて得だからするのであって、環境意識だけでやっている人はほとんどいない。そのことに気づいて、未練はありましたが少し冷めてしまった自分がいて。そこから仕事やモノづくりに対する考え方について思い悩む日々が続きました」。

ミラノでの衝撃、そして気づき

ミラノでの衝撃、そして気づき

そんな時、初めて訪れた世界最大のインテリア見本市、“ミラノサローネ”が久野さんの転機となった。

「些細なスペックで競い合う日本のものづくりとは違い、ミラノの現場はクリエイターが主役。つくり手として意識の高い人たちが溢れていました。加えてクリエイターに対するリスペクトが業界人だけでなく一般の人にも浸透していて、その人たちも商品に対する自分の意見をどんどん口にするんです。つくり手だけでなく、選ぶ人、使う人、買う人の意識が日本とは全く違う。すごく衝撃を受けました。当時会社としては割と危機的な状況だったのですが、自分の中ではとてもすっきりしたというか・・・“僕もこういう一流の人たちと一緒に仕事をしたい”“このミラノで自分がつくったものを認められるようになりたい”という目標ができました」。

ほどなくして、水中器材を扱うエーオーアイ・ジャパンで独自の防水型充電式LEDモジュールを開発。これは以前震災で中止になった水中ライトのOEM企画を諦めきれず、久野さんが個人的に継続して取り組んでいたものだ。これを機に、この技術をアンビエンテックでも活用してコードレスデザイン照明の開発と販売に事業を集約することにしたのだという。

「私たちの水中ライトはいわば最高スペックの充電式コードレスライト。扱う電圧は5~12Vと、一般照明の100Vや200Vとは全く異なります。防水で、かつ蓄電で安定した光をコントロールすることができるシステムがアンビエンテックならではの強みになったのです。それまで悩んでいたモノのつくり方や売り方、誰に対してモノづくりをしてどういう場所で見せるのか・・・ミラノに行くまではかなり病んでいたんですが(笑)、これらすべてが一気に結びついたのが2011年でしたね」。

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今、モノづくりの価値をあらためて考える

久野 義憲

(株)アンビエンテック 代表取締役社長

1969年愛知県名古屋市生まれ。愛知大学卒業後、㈱プラザクリエイトに入社。香港駐在、フィルム映像のデジタル化に向けた新規事業等に関わる。
同社を退職後1999年に設立した㈱エーオーアイ・ジャパンで水中撮影機材のOEM事業を大手カメラメーカー向けに開始。2009年には㈱アンビエンテックを設立し、コードレス照明ブランドとして製品展開を始める。
現在は水中撮影機材で培った独自の蓄電式LED制御技術と防水技術を強みとして、ダイビング用水中ライトの“RGBlue”、インテリア照明ブランドの“ambienTec”という対極ともいえる業界で本格的照明機器のグローバルブランドを目指すことをライフワークとしている。

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