EVENT REPORT

Nov 2019

観光産業で日本を元気に
~スケーラブルな事業のつくり方~

日本を訪れる外国人旅行者は2018年3,000万人を超え、2030年には6,000万人、消費額は15兆円というのが、日本政府が掲げる目標だ。

そうしたインバウンド市場が盛り上がるなか、訪日外国人旅行者向けの観光プラットフォームサービスを展開するWAmazing株式会社。同社は、専用アプリで旅行者の5大消費といわれる「交通」、「宿泊」、「飲食」、「買い物」、「アクティビティ」の情報を発信し、予約手配から決済までをスマートフォン一つで完結できるサービスを提供している。

今回はWAmazing代表取締役の加藤さんをお招きし、日本の観光産業を通じて実現したい地方創生への想いを伺うとともに、スケーラブルな事業をつくっていくためのヒントを探った。

これからの日本を支えるための“観光“

これからの日本を支えるための“観光“

講演の冒頭、加藤さんは100年後の日本に関する数字をいくつか示した。悲観的な推計値では人口はおよそ4,200万人まで減少し、そのうち高齢者の割合が4割を超えるといわれている。

「人口4,000万人規模の先進国はヨーロッパに多く見られますが、もし4割を超える高齢化率で日本がいまのままの活力を維持していこうとすると、消費経済と生産労働力の維持という観点で、外国人の重要性が高まっていくと考えらます。実際に外国人労働者受け入れの規制緩和も進んでいて、2018年にはこれまでの専門性の高い18職種に加えて単純労働の5職種が追加されました」。

しかし、受け入れ態勢を整えただけでは外国人が日本に働きにやって来るとは限らないという。現状、多くの外国人労働者の日本で働く理由は、経済格差を利用して家族に仕送りをするためだが、そうした側面では日本はもはや有利な国ではないからだ。

「日本は現在生産経済成長率が1~1.5%なのに比べ、中国は鈍化しているとはいえ依然6.5%、東南アジアも2桁成長を続けています。こうした状況の中、外国人に雇用条件だけではない日本の魅力を伝えることで、 “訪れたい”“住んで働きたい”と思ってもらえる国になることが重要です。そこで私たちは、まずは観光をきっかけに地方の隅々まで日本の魅力を知ってもらい、世界中に日本のファンを増やしていくために事業を進めています」。

訪日のポイントは“近さ”と“豊かさ”

訪日のポイントは“近さ”と“豊かさ”

訪日のポイントは“近さ”と“豊かさ”

外国人による日本の観光ニーズも年々高まっており、それはインバウンドの消費マーケットを見ても明らかだ。数年前は1兆円にも満たなかった市場が、2018年には4.5兆円に成長し、実にその約7割を中国・香港・台湾からの旅行者が占めている。加藤さん曰く、その理由は“近さ×豊かさ”にあるという。

「たとえば、日本人でも東京在住で箱根や草津などの温泉地に行く人はたくさんいますが、有馬や城崎など関西の温泉地に行ったことがあるという人は少ないんですね。その差は目的地までの距離。つまりアクセスのしやすさがものをいうんです。これはいまも昔も、国内も国外も変わりません。さらに旅行は衣・食・住が満ち足りた人がおこないますから、日本から近い国の中でも一人当たりのGDPが高い、先ほどの3地域の方々がたびたび日本を訪れて旅行消費をしているということなのです。こうした背景から、私たちも香港や台湾の方々をメインターゲットにサービスを展開しています」。

国際旅行人口は2015年の12億人から2030年には18億人に増えると予測されているが、その差分にあたる6億人の大半をアジア諸国の人々が占めるといわれている。また、その6億人が観光に訪れるのは、近くてアクセスのしやすい日本が有力だという調査結果も出ており、日本の観光産業は今後も着実に拡大していくと見込まれているというのだ。

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観光産業で日本を元気に
~スケーラブルな事業のつくり方~

加藤 史子

WAmazing株式会社 代表取締役社長・CEO

慶應義塾大学環境情報学部(SFC)卒業後、1998年に(株)リクルート入社。 「じゃらんnet」の立ち上げ、「ホットペッパーグルメ」の立ち上げなど、主にネットの新規事業開発を担当した後、観光による地域活性を行う「じゃらんリサーチセンター」に異動。 スノーレジャーの再興をめざし「雪マジ!19」を立ち上げ。 その後、仲間とともに「Jマジ!」「ゴルマジ!」「お湯マジ!」「つりマジ!」…など「マジ☆部」を展開。 国・県の観光関連有識者委員や、執筆・講演・研究活動を行ってきたが、「もう1度、本気のスケーラブルな事業で、日本の地域と観光産業に貢献する!」を目的に、2016年7月、WAmazingを創業。

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