EVENT REPORT

Sep 2019

発達障害を知る
~“障害のない社会”の実現に向けて~

社会課題解決に向けて、企業ができること

社会課題解決に向けて、企業ができること

社会課題解決に向けて、企業ができること

企業が“障害”という社会課題の取組みを行う際、ボランティア活動の枠組みで収まってしまうことが多いだろう。しかし、その活動を持続的にしていかければならなく、そのためには大事なポイントが3つあると鈴木さんは説明してくれた。

「一つ目は、誰の、どんな課題を解決したいのかということ。障害には様々な側面の課題があるが、その中で自社の事業ではどの課題に向き合っていけるのだろうかを考える。二つ目は、企業のビジョン、ミッション、事業を踏まえて、なにをやるべきかということ。事業として持続できることを考える。三つ目は、関わる私たち自身が、いきいきと取り組めるテーマであるかということ。義務感でやるのではなくて、自分も楽しむ発想でできると良いと思います」。

イベントでは、LITALICOと一緒に取り組んでいる企業3社にご登壇いただき事例を紹介していただいた。登壇いただいたのは、株式会社すららネットで無学年式オンライン教材のマーケティングを担当している佐々木章大さん、コクヨ株式会社でIoTペンの開発を担当している中井信彦さん、株式会社LIFULLでLIFULLHOME’S住まいの窓口を担当している久山貴暉さんの3名だ。

すららネットの佐々木さんは、発達障害のある子どものいるユーザーの意見を聞くうちに、その悩みの深さに気づき、その悩みに2年以上寄り添っていく中で、自社サービスがきちんとその解決に役立っている実感を得られたという。 また、“発達ナビ”を通じて発達障害のある方に自社サービスを知ってもらうことで事業の継続、拡大につながると考えている。

コクヨの中井さんは、IoTペンの開発段階でLITALICOと出会い、発達障害のある子どものいる家庭にもモニターになってもらったそうだ。その結果も踏まえて、宿題が終わった、問題に正解したということ以前に、鉛筆を手にもって勉強に取り組んだことを可視化することで、親が子どもを褒めるポイントを増やすIoT文具「しゅくだいやる気ペン」を開発・リリースした。「書く⇔褒める」の好循環から親子の円滑なコミュニケーションを生み出し、学びの習慣化を促す。モニター調査を通して個性の幅広さ、多様さに気づき、顧客体験デザインの見直しができ、 “商品を通じて世の中の役に立つ”という自社のビジョンと一致する商品を創り出せたという。

LIFULLは、もともとWebサイトやアプリで顧客と不動産会社の情報格差をなくしてきた。近年は、LIFULL HOME’S住まいの窓口という直接顧客と対面して相談できる窓口を通して、顧客が抱える住まいづくりや住まい選びについての困りごとを解決してきた。久山さんはLITALICOと出会うことで、住まいづくりの知見が深く、顧客に最後まで寄り添う住まいの窓口であれば、発達障害のある子どものいる家庭の困りごとの解消や家を選ぶポイントの共有で充分役に立てると思ったそうだ。そこで“発達ナビ”を活用して発達障害のある子どものいる家庭にアンケートをとり、住まいの相談会を実施したところ、非常に高い反響を得られたという。これからもコラムの掲載や定期的な相談会の開催で住まいづくりの力になりたいと考えているそうだ。

最後に鈴木さんは、障害をはじめとする社会課題の解決を直接のテーマにしていない企業にもできることがあると教えてくれた。

「世の中には色々な凸凹がある人がいて、ライフステージごとでも様々な困りごとが出てくるわけで、そこに関係しない企業や事業領域はないと思います。それぞれの企業の事業として持続できる方法を考え、共に議論したり提案したりしていくことが私たちの役割だと思っています。マイノリティといわれる人たちの色々な悩みごとを知ることが、結果としてユニバーサルな対応に繋がっていきます。既存のビジネスモデルの中でどういうことから対応できるのかを一緒に考え、通常の事業活動とマッチするような形で発達障害のある方の困りごとを解決してゆく。そんな仲間を増やしていきたいです」。

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発達障害を知る
~“障害のない社会”の実現に向けて~

鈴木 悠平

株式会社LITALICO 社長室チーフエディター、NPO法人soar 理事。コロンビア大学大学院 公衆衛生 保健政策専攻 修士。
1987年生まれ。一人ひとりが<わたし>の物語を紡いでいける社会を目指して、執筆・編集業を中心に活動。現在は、株式会社LITALICOおよびNPO法人soarでの事業運営や文筆活動を通して、障害や病気、その他さまざまな要因で生きづらさを感じている人たちとかかわりながら、 人が物語を通して回復していくプロセス、<わたし>と<あなた>の物語が響き合うなかで新たな希望が見出されるプロセスの探求、伴走、創出をこころみている。
株式会社LITALICO:http://litalico.jp/

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