EVENT REPORT

Apr 2019

社会課題解決型事業で個人と企業を巻き込む
~あなたも誰かのサンタクロース~

活動方針の転換。サンタが本当に必要な子どもたちのもとへ

活動方針の転換。サンタが本当に必要な子どもたちのもとへ

活動方針の転換。サンタが本当に必要な子どもたちのもとへ

「2014年には、サンタが訪れた子どもの数が1万人を超えたことを契機に、サンタを体験する大人をもっと増やしたいと思い、チャリティーサンタをNPO法人化しました」。

しかし、ある研修に参加した際に、業界の大先輩から言われた言葉が、チャリティーサンタの活動の方向性を変えることとなる。

「1万人の活動を10万人、100万人に拡大していく事が君たちにとって正しいことなの?」と、業界の大先輩に問いかけられた。そして、その人は続けてこう言った。

「君たちは活動を拡大する前に、今までサンタが届けてきた1万人の子どもたちがどのような環境で過ごし、なにに喜び、困っているのか、まずは彼らが置かれている環境を正しく把握しなさい」。

いままでも活動に対するフィードバックはもらっていたが、こどもの置かれている環境については把握していなかったため、2015年に初めて顧客調査を実施することにしたという清輔さん。

直近で利用してもらった千数百の世帯に対しメールでアンケートを依頼し、3割程度の家庭から回答を集めた。その結果、既存顧客は非常に裕福な家庭が多いことが分かった。

「考えてみれば、クリスマスの時期に自分の子どもを楽しませたいと考え、情報を調べてお金を払って申し込んで、という手順を踏むのは、そもそも時間的にも金銭的にも余裕がないとできないことだと気づきました」。

そこで、これまでほとんど届けられていなかった、世帯年収200万円未満の世帯にも追加でアンケート調査を行ったところ、日常生活は送れていても、旅行やクリスマスなどのイベントを行えていない家庭が多いということが分かった。特にシングルマザーの世帯から、「思い出が残せていない」という回答が非常に多く寄せられた。

「日本の中で、経済状況によるクリスマス格差があり、サンタクロースが来ない家庭があるということが調査結果から分かりました。そこで、サンタクロースが来ない家庭にサンタクロースが来る仕組みとして、2015年からこちらが準備したプレゼントやサンタからの手紙を届けるための活動資金を募る『ルドルフ基金』を始めました」。

社会にインパクトを与える仕組みづくり

社会にインパクトを与える仕組みづくり

しかし、1度プレゼントを届けて終わりでは本質的な解決にはつながらない。

「チャリティーサンタだけで活動するのではなく、家庭によってクリスマス格差がある現状を多くの人に伝えなければならないと考え、社会を本気にするニュースをつくろうと決めました」。

そこで、清輔さんたちは、顧客調査からさらに一歩踏み込んで、現状把握と認知拡大を目的に社会調査を実施。一般の子育て家庭2000世帯とシングルマザー100人に対し、クリスマスに関するインターネット調査をおこなった。

調査から見えてきたことは、子育て家庭では、クリスマスを子どもの誕生日に次いで2番目に大事な年間行事とする一方で、シングルマザー家庭の1割が「うちにはサンタクロースがこない」としている状況だ。また、シングルマザーの3人に1人が「クリスマスが来ないでほしい」と思ったことがあるという。

この調査結果が、ある通信社で記事となり、新聞、テレビ、WEBなどさまざまなメディアへ波及することで、チャリティーサンタの取り組みが認知され、支援者の増加につながった。

また、チャリティーサンタでは、サンタになる以外の形でも関わることのできる人を増やすため、活動を応援するサポーター組織として「TEAMトナカイ」を発足するほか、自分の選んだ絵本を厳しい家庭の子どもたちへ寄付できる「ブックサンタ」のプロジェクトを立ち上げるなど、年々活動の幅を広げている。

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社会課題解決型事業で個人と企業を巻き込む
~あなたも誰かのサンタクロース~

清輔夏輝

NPO法人チャリティーサンタ 代表理事。福岡県出身。国立有明高専建築学科卒。建築設計事務所、ITフリーランス、株式会社サイバーエージェントを経て、2014年よりNPO法人チャリティーサンタ代表理事。
6歳のクリスマスにサンタさんから直接プレゼントをもらった経験が原体験。18歳から始めたヒッチハイクで日本3周。千人以上の人と出会い、人の優しさに触れ「恩返しではなく恩送り」という価値観を知り、現在の活動を開始。延べ1万人をサンタ活動に動員、2万人の子どもに届け、現在は本業がサンタクロース。25都道府県34支部で活動。(2018年時点)
チャリティーサンタ:https://www.charity-santa.com/

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