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Dec 2018

最先端ITが農業の未来を変える

ライフワークとして選んだのは、課題が山積みの「農業」

ライフワークとして選んだのは、課題が山積みの「農業」

ライフワークとして選んだのは、課題が山積みの「農業」

在学中、最初に注目したテーマは“健康”だったという。

「高齢化が進み社会保障費が増大するなか、健康を維持することが非常に重要になっています。そして、健康の源は“食”にあると考えたときに、いま私たちが食べている中身について多くの課題があることを知りました」。

厚生労働省では、1日350gの野菜を摂ることを推奨しているが、野菜の消費量も生産量も年々激減。また、50年前に比べて、野菜の栄養価も半減しているという。現在では、一年を通じて色々な野菜を食べることができるが、本来の旬ではない時期に収穫したものは、旬の食材と比べて栄養価が低くなる。例えば、ほうれん草は冬の食物で、冬と夏とではビタミンCの量が約4倍違う。トマトなどは栄養価そっちのけで、いまでは糖度重視の食味競争となっていると小池さんはいう。

グローバルでみると、年間7千万人以上人口が増えているが、国連の発表によると、世界の耕作可能地域はどんどん激減している。また、農業生産可能な食糧の3分の1(年間8億人分の食糧に値する)が病虫害被害で失われており、これは世界の飢餓人口(約8.5億人)にほぼ匹敵する量だ。

農業生産については、半世紀以上前に、高収量品種の導入と化学肥料と農薬によって大量生産を可能にする「緑の革命」が起こったが、現在の栽培方法はその頃からほぼ変わっていない。

農業は国の食糧安全保障に密接に関わっており、規制産業として保護されるため、競争が促されずイノベーションが起こりにくかったからだ。しかし、現在の生産方法は農業機械、ハウスの加温、化学肥料製造など化石燃料に依存しており、これからの世界的な人口増は食料問題、資源問題、環境問題といった面でも課題を抱えている。

「大学で勉強していくなかで、“健康・食・農業・環境”に特に興味を持ちました。持続可能な健康と環境を実現するためには、エネルギー問題も大事だけれど、人間のエネルギー源である食料をつくる産業である『農業』に一番興味を持ったのです」。

無農薬有機栽培への挑戦。

無農薬有機栽培への挑戦。

無農薬有機栽培への挑戦。

無農薬有機栽培への挑戦。

東京大学EMP修了後に就農し、栃木県の那須でイタリア野菜の無農薬・有機栽培に挑戦した小池さん。しかし、初めての農業は失敗の連続で、露地もハウスも含めほぼ全滅だったという。

「周囲の農家からは無農薬での栽培は無理だといわれました。しかし、東京大学の植物病理学研究室の主任教授に相談したところ、研究によって主要な病気の発生のメカニズムがかなり判明していることがわかりました」。

植物の病気を防ぐために重要となるのが、温度や湿度、葉面濡れ、日射量、土壌水量などの管理だ。

「ホームセンターで温度計や湿度計などを買ってきて測ってみましたが、まったく埒があきません。そこで、ITで管理・分析できるツールがないか探したところ、農研機構の研究成果をもとにした、『フィールドサーバ』という製品を見つけました」。

システムを導入し、病気が発生しないよう制御したところ、段々と被害が少なくなり収穫ができるようになっていったという。

「20品種程生産できるようになった頃、収穫した野菜を都内の週末マルシェで販売してみました。当初は月に数回の販売でしたが、それでは平日にロスが出るため、常設の八百屋を代官山に出店しました」。

店頭では、大きなディスプレイに圃場の様子をリアルタイムで映し出すほか、収穫日もすべて表示し、安心・安全を打ち出した。八百屋の隣にイタリアンレストランも出店し、野菜や果物はすべて自家製のものを使用したところ、飲食店情報サイトで高評価を取得するなど評判になったという。

「順調に滑り出した矢先に東日本大震災が起こり、一旦、農業生産と八百屋、レストランのすべてから撤退しました。その後、親しくしていた生産者がいたこともあり、北海道に場所を移して再び農業を始めました。いまでは全国10ヵ所程で農業生産をおこなっています。周りから農業ICT企業だと思われますが、自分たちは農業生産者だと思っています」。

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最先端ITが農業の未来を変える

小池 聡

ベジタリア株式会社 代表取締役社長。
iSi電通アメリカ副社長を経てNetyear Groupを創業。1990年代は米国でベンチャーキャピタリストとして活動。
ネットイヤーグループ(株)創業者、(株)ネットエイジグループ(現ユナイテッド)前代表取締役社長。
社会人向けビジネススクール東京大学EMP修了後の2009年に食と農業に関心を持ち就農。
2010年ベジタリア(株)を設立。文部科学省「革新的イノベーション創造プログラム(COI)」ビジョナリーリーダー。経済産業省グローバルネットワーク協議会委員。東京商工会議所(渋谷)副会長。

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