EVENT REPORT

Jul 2018

女性企業家が伝える「自分ならでは」の事業

閉鎖的な病院内に明るく楽しい空間を

闘病中、塩崎さんにはもう一つ不満だったことがあったそうだ。それは、生活の拠点である病院内に楽しいことがないということだった。

「多くの人は、人生で一度は長期期間病院にお世話になりますよね。その病院がこんなにつまらなくていいのかなと思っていました。そこで私は、病院内に楽しくオアシスのような空間を作りたいと考えたんです」。

2017年の夏、群馬県の病院内に「KISS MY LIFE」のケア・介護用品やお見舞い品、入院グッズなどを取り扱う店舗をプロデュースした。パリのパサージュをイメージしてデザインしたという内装は、お年寄りの方から子どもまで思わず立ち寄ってしまうような雰囲気を作るため、落ち着いた中に遊び心をたくさん散りばめるよう工夫をしたそうだ。オープンして半年で、このスペースはショップとしての役割以上にコミュニティの場になっているという。

「この取り組みを色々なところに拡げていくために、私たちは自社運営で省スペースに対応できるキオスク型の店舗を始めました。現在、全国8か所の病院で展開しています。これから新たに7か所でのオープンが決まっています。今後は薬局や介護施設への展開も進め、3年で300か所に広げたいと考えています。私たちの商品や店舗が必ずどこの町にもあり、ケアや介護が必要になった時に気軽に立ち寄れる、そんな風にしたいと思っています」。

自分たちの“想い”に賛同してくれる仲間を見つける

自分たちの“想い”に賛同してくれる仲間を見つける

現在、医療・介護関係の施設の数は約23万軒と、全国のコンビニの軒数の4倍以上。この領域で店舗を出すことは渋谷の一等地に店を構えるような規模感だという。

「ケア・介護用品は、お客さんが洋服を直接手に取り、“かわいい”と思って買うアパレル業界とは異なり、まず病院側が店舗に並べる商品を選び、業者から買うんです。そのため、商品を使う患者さんではなく、病院に気に入ってもらう商品が作られてしまうという問題がありました。そこで私たちは、患者さんや医療従事者の後押しを味方につけ、業者としてではなく、私たちの生き方や考え方に賛同してお付き合いしてくださる病院を見つけて店舗を拡大しています」。

塩崎さんは常に、患者さんをはじめ、そこに関わる人たちの視点や気持ちを大切にして事業を考えている。患者さんが寝たきりで、訳も分かっていないからという理由で一日中汚れたパジャマを着させられている様子も彼女には疑問だったという。「きっと介護する側や見舞う側は、大切な人のそんな姿を見るのは切ないだろう」「本人がわかっていなくてもおしゃれをさせてあげたいのではないか」、そう考えた塩崎さんは、介護の領域にも参入し、これまでにない商品開発に力を入れている。こうした“共感力”も、ひょっとしたら女性企業家として活躍する塩崎さんの強みの一つなのかもしれない。

最後に塩崎さんは、今後の構想について教えてくれた。

「ひとまずは5年後までを考えています。今年中に都内の病院でフラッグシップ店をオープン、自社カタログの制作・販売や、ECでの販売もやっていきたいと思っています。その後は、越境ECや海外店舗にも着手したり、ケア・介護用品のファッションショーも開催したいですね。5年目で誰もが知っているブランドとして、ケア・介護、そしてアパレルで国内No.1の売り上げを目指しています。“誰もが自分らしく生きられる社会へ”、事業と共にこのメッセージを世界中に拡げていきたいです」。


<Jun.2018 鈴木 潤子(WAO事務局)>

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女性企業家が伝える「自分ならでは」の事業

塩崎良子

株式会社TOKIMEKU JAPAN、代表取締役社長。2006年 アパレル会社を起業。その後、セレクトショップ(中目黒)、リース専門店(目黒)ドレスレンタルショップ(六本木)等、数々のショップを経営。2014年1月、若年性乳がんを発症。その後、闘病に専念のため、会社を閉める。
2015年6月、主治医の提案で、がん患者の為のサイバーズFASHION SHOWを企画、運営。多くのメディアに取り上げられる。2016年7月、株式会社TOKIMEKU JAPAN設立。2017年1月、ケア・介護用品ブランド『KISS MY LIFE』を立ち上げる。

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