EVENT REPORT

Jun 2018

MEANING DRIVEN DESIGN~意味が先行するデザイン~

未来のデザインに正解はない

テクノロジーの発展に伴い、変化が激しい“いま”。こうした“いま”を起点とすると、未来はどんな時代になっていくのだろうか。

AI研究の世界的権威者で、GoogleのAI開発技術責任者も務めるレイ・カーツワイルは、“僕らの進化は比例直線的ではない。今年が2だとしたら、来年が3、再来年が4になるのではなく、2×2、4×4、16×16というように指数関数的に進化する。なぜならAIの成長は比例直線的ではなく指数関数的な成長していくからだ”と述べている。

こうした成長スピードは多くの製品のカタチにも影響を与えることはいうまでもない。例えば、全ての製造業はあと数年で3Dプリンタに置き換わるといわれ、その3Dプリンタの発展はバイオ分野にまで影響を及ぼすとまでいわれている。また、Facebookでは脳でタイピングする技術の研究者を集めプロトタイプをおこなっており、すでに脳で考えたことが脳波によって文字として100文字程度まで打つことを可能とし、次世代のインターフェースとして注目を集めている。

「こういった未来が予測されるなかで今現在、様々な領域で「絶対的に感じられる価値」 も時代の変化と共に必ず変化していきます。僕自身もスマホが生まれて、世の中の興味が急激に変化するのを目の当たりにして、これからの時代を生きる自分が、これまで先達が歩んできた道を同じように歩むことが良いのか、仕事を減らし悩んだ時期がありました。 10年前と10年後では人の興味も、会社のあり方も、モノづくりのシステムもまるで違う。マスプロダクトのデザイナーにとっても、社会から求められるものが数年前と比べて大きく変わってきている。そのことに気がついて大きな方向転換をしました」。

これからのデザイナーは「ビジョンテラー」としての役割が必要になってくるのではないかと語る坪井さん。ビジョンテラーというのは、ストーリーテラーという物語を創る・構築する人という言葉のストーリーをビジョンに置き換えた坪井さんの造語である。

「いままでプロダクトデザインでは技術や価格、ターゲットを前提とした意匠設計という 意味合いが強かったのですが、これからは造形力・エンジニアリング力のみにとどまらず、 そのモノやサービスがどんな感情や価値を私たちの毎日にもたらしてくれるかという『意 味のデザイン』が、ますます重要になっていくと考えています。そのためには、今目の前 に見えている欲求を満たすためのものを形作るだけでなく、あらゆる常識や前提みたいな ものを疑い、いまはまだ顕在化されていない、私たちの本質的な欲求を見通す力が一層求められていく気がします。そして、それらを今この机の上に具現化することのできる道筋や 解決策を提言できる力がデザイナーに求められていくと考えています」。

デザインの可能性

では、このように未来が変わっていく中で、デザインはどう変わっていくのか。

坪井さんはMEANING DRIVEN DESIGNと共に新たなデザインの概念を提唱しているという。それが「MISSING DESIGN」だ。“MISSING”というのは、INFORMAL・ IMMATERIAL・SEAMLESS・MASS-PERSONAL・ VAGUE・FINE・UNCONSCIOUS・BIOLOGICALという今後の世の中の潮流を表す8つのイメージを共通化させたコンセプトのこと。

インダストリアルデザインの世界では「LESS IS MORE」、「LESS BUT MORE」など、“LESS”という整理する事や削ぎ落とす事で存在感を弱め、辺り一帯の空間との調和を図ることに価値が置かれたデザイン概念がいま尚続いているという。LESSが少ないを意味する一方で“MISS”というのは“無い”、“見失う”という状態だ。

「昔、ある家具ブランドのカタログの写真を見ていて、はっとした時かがあります。そのカ タログには過不足なく芳醇な生活空間の写真が散りばめられていたのですが、どのページ を見渡しても一切、電化製品が出てこないのです。そこにあるものは美しい家具や、絵画、 彫刻、調度品や照明器具があるだけ。そして、そのものがそこに美しく配されるだけでこれ以上この空間の中になにもいらないと思えました。むしろ家電製品らしさを感じるものが そこにあればあるほど、空間を汚すのではないかと感じてショックを受けたことが、 MISSINGという概念を考えたきっかけです。スーパーデザイナーがどんなに美しくLESSなるエアコンをデザインしたとしても、その空間を彩ったり、特定のアイデンティティを与える主役の側は家具的要素の側にあり、家電を感じさせる要素はそこに在るより、無いほうが良いと思えたのです。機能そのものは必要ですが、壁や床・天井に接するそういった 家電製品のデザイン概念は“LESS”から、“MISS”へと移ってゆくと考えています」。

MISSINGというのは何も無いのに、空間における豊かさや芳醇さが漂っている状態を表す デザイン概念。禅庭や美術館のように、そこに置かれる物の価値を最大限抽出させるため の行為として、環境に対して弱めたり、目立たせなくする手法ではなく、家電そのものの 輪郭のない状態を作るという。坪井さんはそのようななにも無いのに、全てある状態を 「FULL EMPTY」と呼んでいて、現在の様々なプロジェクトで実現を目指しているそう。

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MEANING DRIVEN DESIGN~意味が先行するデザイン~

坪井 浩尚

PRODUCT DESIGNER。禅の思想を背景にアート・サイエンス・テクノロジーと様々な領 域を自在に横断し、対象の環境を柔軟且つ鋭く読み解き、モノに独特の生命を吹き込むア プローチに定評がある。主な代表作に、Google社の電子デバイス「Magic Calendar」、 Meizu社のスヒピーカー「Gravity」、KDDI社の携帯電話「LIGHT POOL」、プロダクトブランド100%への「SAKURASAKU glass」など多数。

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