EVENT REPORT

Aug 2017

すべてにおいて、美しいデザイン

原体験が生んだ使命感

原体験が生んだ使命感

原体験が生んだ使命感

日本に戻り、金融業界へと就職したが、鉱山労働者と生活を共にした体験は、白木さんの心に強く残ったままだった。そして、その想いは白木さんを起業へと決意させることになる。

「貧困問題を解決するという枠のなかで、いろいろとビジネスモデルを考えていたんですが、ジュエリーでビジネスをおこなおうと決意した理由は主に2つありました。一つは、南インドでの鉱山労働者との出会い。そして、もう一つは、河原の石や海辺で拾った貝殻でアクセサリーをつくることに夢中になっていた小さいころの体験です。こうした原体験もあって、このビジネスは“私がやるべきかもしれない”という気持ちになっていきました」。

原体験は使命感へと変わり、「HASUNA」は生まれた。
現在、「HASUNA」では、さまざまな国からジュエリーの素材を仕入れている。金はペルーやコロンビア、牛の角はルワンダ、貝殻や黒珊瑚はベリーズ、アクアマリンやトパーズといった石はパキスタンなど。そして、その一つひとつの生産者と「HASUNA」の関係にはストーリーがある。

「パキスタンでは、原石を買い叩き、運び出す密輸業者によって、現場が貧困から抜け出せない状況があり、その状況を打破しようと、パキスタンの人たちで立ち上げたNGOがあります。そこでは、適正価格で石を買い取るだけではなく、現地の貧困層の女性たちに6か月間の研磨のトレーニングプログラムを提供し、宝石の研磨職人として自立できるように支援する活動までおこなっています。『HASUNA』は彼らから宝石を買い付けて、製品化しています。彼らの活動をビジネスを通して、支援することで、鉱山労働者たちの生活向上や女性たちの自立につなげていきたいと思っています」。

そのほかにも、ルワンダでは、最初に訪れたときは、2名で運営していた工房も、「HASUNA」との取引を経て、ルワンダ国内での需要も増え、いまでは従業員も10名ほどに増えたという。

「私たちの品質基準を満たす商品ができるまで、長いものでは1年くらいかかったこともありました。言葉だけでは通じないので、図解で説明したり、現地に職人を送ってワークショップをしたりなど、大変でしたね。けど、私たちの厳しい要望にも応えてもらうことで、いまでは技術力もあがり、なかには、『HASUNA』が買わなくても自立していける工房も増えてきました」。

美しいものでできている

美しいものでできている

設立時は、エシカルという言葉が市場に浸透していなく、「HASUNA」の説明より、エシカルの説明に時間を要したと話す白木さん。そうした状況のなかでも、白木さんは、美しいものを届けたい一心で行動を起こしてきた。

「『HASUNA』のブランドコンセプトは『美しいものでできている』です。私たちは美しいものをつくりたい、美しいものをお客様に届けたいという想いでいます。そして、私たちが意味する“美しい”とは、成り立ちから美しいということです。決して『社会貢献をしているからジュエリーを買ってください』ということではありません」。

白木さんはエシカルジュエリーのことを「パーペチュアルジュエリー」と呼ぶ。パーペチュアルとは、永続的を意味する。

「親から子へ、子から孫へと。ずっと使ってほしくて、私たちは、普遍的なデザイン、普遍的な美しさということを追求しています。そのため、人と社会と自然環境に配慮し、誰も傷つくことのない素材を使うことは当然であり、そうした想いを持って、『HASUNA』を運営しています」。


トーク終了後、白木さんからのお題に応えるワークショップがおこなわれた。参加者からは自由活発な意見が飛び交い、イベントは大盛況のうち終了した。

モデレータ:廻田 彩夏(株式会社シンカ)

<Aug.2017 小出 伸作(WAO事務局)>

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すべてにおいて、美しいデザイン

白木 夏子

ジュエリーブランド「HASUNA」代表。英ロンドン大学卒業後、国連機関、金融業界を経て2009年4月にHASUNA Co.,Ltd.を設立。人、社会、自然環境に配慮したエシカルなジュエリーブランドを日本で初めて手掛け注目を浴びる。
2011年「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤーキャリアクリエイト部門」受賞、世界 経済フォーラム「Global Shapers」、AERA「日本を立て直す100人」に選ばれ る。2012年APEC(ロシア)日本代表団としてWomen and Economy会議に参加、2013年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加と多方面で活躍中。
株式会社HASUNA:https://www.hasuna.co.jp//

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