すべてにおいて、美しいデザイン
商品そのものはもちろん、成り立ちからインパクトまで、どこから見ても美しいジュエリーに人は魅了される。すべてにおいて美しいデザインは、いかにして生まれ、育ってゆくのか。
今回のWAOでは、エシカルジュエリーブランド「HASUNA」を展開する白木夏子さんを迎え、溢れ出る情熱を注いだその足元から、5年後10年後まで全体をデザインするその視線はなにを捉え、どのように生み出してゆくのかを学ぶため、イベントを開催した。
*エシカルとは:“倫理的”・“道徳上”を意味する。最近では、「人と社会、自然環境を考慮してつくられているものを購入する」といった、「エシカル消費」というキーワードが注目されている。
“つくる”に没頭していた少女時代
昨今、消費キーワードとして、耳にする「エシカル」だが、まだ、この言葉が浸透していなかった2009年に誕生した日本初のエシカルジュエリーのブランドがある。
白木さんが代表を務める「HASUNA」だ。その名前は、泥のなかでも気高く、力強く、そして美しく咲く花、「蓮の花」から生まれた。
現在では、表参道の本店のほか、全国の百貨店やセレクトショップなどでも取り扱われるまでに成長。白木さんは、「HASUNA」が立ち上がるまでの経緯を教えてくれた。
「ファッションデザイナーの母に育てられた私は、小さいころから、自分の手でなにかを生み出す“つくる”ということがとても好きでした。母の真似をして、洋服をつくったり、河原や海で石や貝を拾っては、アクセサリーをつくったりしていました」。
そんな少女時代を過ごしていた白木さんだが、高校生になったころ、さまざまな国を旅してきた祖父に影響をうけ、「外にでてみると、楽しい世界があるかもしれない」という想いを持ちはじめたという。そうしたなか、あるフォトジャーナリストの講演を聞き、イギリスへの留学を決めることになる。
「フォトジャーナリストの講演で、写真を通して、世界で起きている貧困問題や環境問題のことを知り、衝撃をうけました。その出会いをきっかけに、将来は国際協力に携わっていきたいと思い、イギリスで国際協力を学ぶための留学を決めました」。
鉱山労働者との出会いから生まれた“問い”の連鎖
留学後は授業だけでは物足りなく、色んな国へ旅し、フィールドワークをおこなっていたという白木さん。その活動のなか、鉱山労働者の現状を知る出会いが訪れる。
「南インドのチェンナイから車と徒歩で5、6時間かけて訪れた村で印象的な出会いがありました。その村は、アウトカースト(カーストにも入れなく、差別をうけてきた人たち)と呼ばれる方たちが多く住んでいる村で、私は、そこに2か月ほど滞在し、多くの鉱山労働者たちの人たちと出会いました」。
その村の鉱山労働者が採掘していたのは、大理石や化粧品のパウダーなどに使われる雲母(うんも)と呼ばれる素材。鉱山労働者たちは、安全とはいえない環境のなか、こうした素材の採掘のために朝から晩まで働き、子どもたちも学校へは行かずに、鉱山で一緒に働いていた。
「彼らは、1日1食しか食べられない日も多く、本当に貧しい生活を送っていました。そうした生活を目の当たりにして、『私たちはお金を払って、彼らが採掘した素材でつくられる製品を購入しているのに、なぜ、現場の彼らにお金が行き渡っていないのか』とういことを考え、悶々とするだけでした」。
その後、白木さんは鉱山労働者のことを調べはじめる。そして、考えれば、考えるほど「ビジネスの在り方」に疑問を抱くことになる。
「いまの資本主義の仕組みのなかでは、安い労働力や原材料を追求し、そして高く売るということがおこなわれています。このビジネスの在り方自体が変わらないと、鉱山労働者の生活はなにも変わらないと思いました。つまり、その間にいる企業が、倫理観を持ち、自分たちの製品の素材がどこでつくられ、誰にお金が行き渡っているのかまで考えていく。そうした倫理観を持つことが、鉱山労働者の貧困問題の解決につながっていくと思ったんです」。
すべてにおいて、美しいデザイン
白木 夏子
ジュエリーブランド「HASUNA」代表。英ロンドン大学卒業後、国連機関、金融業界を経て2009年4月にHASUNA Co.,Ltd.を設立。人、社会、自然環境に配慮したエシカルなジュエリーブランドを日本で初めて手掛け注目を浴びる。
2011年「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤーキャリアクリエイト部門」受賞、世界 経済フォーラム「Global Shapers」、AERA「日本を立て直す100人」に選ばれ る。2012年APEC(ロシア)日本代表団としてWomen and Economy会議に参加、2013年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加と多方面で活躍中。
株式会社HASUNA:https://www.hasuna.co.jp//
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