どう提案し、どう動く? いま話題のサーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミーの課題
最後に、加藤さんはサーキュラーエコノミーが抱えている課題を教えてくれた。
「何より、サーキュラリティ、循環性という概念は万能か?ということ。循環率には耐久期間の概念が反映できないことや、たとえ循環率が高まったとしても、インプットの総量が大きくなっていると、廃棄の絶対量が増えているということもあります。また、サーキュラーエコノミーが広まることで、サーキュラーウォッシング(実態が伴わない見かけだけの取り組み)のリスクも高まります」。
また、サーキュラーエコノミーの原則だと、廃棄を失くすデザインが必要だが、廃棄物がでている現状を考えると、廃棄からつくるデザインも必要とされる。しかし、それが推進されすぎると、捨てても再資源化できるなら、と、捨てるごみの量が変わらなくなってしまう。
同じように、フリマアプリがあることで、あとで売れるだろうと必要のないものまで買ってしまうなどの「リバウンドエフェクト」が起きる可能性もあるという。
さらに、サーキュラーエコノミーのモデルにも課題がある。PaaSモデルで返却OKとなると利用者から企業への物流が増えて、環境負荷が増えてしまう。また耐久性のために複合素材を使用するとリサイクル可能性が下がるといった、同じサーキュラーデザインの要素でもバッティングすることもある。
「ほかにもリペア素材はバージン素材に比べ価格が高いという経済競争力の低さや、情緒的耐久性の短さからまだ着られる(物理的耐久性はある)服が捨てられるなど、課題は様々です。こうしたサーキュラーエコノミーの課題一つひとつに応えていくのがデザイナーの役割かと思います」と加藤さんは話す。
今回のベント終了後、参加者からは、「非常に気づきがあった。世界中で取り組みがされている中で、日本らしく取り組んでいけるほうがサスティナブルなものになるのかと感じた」。「サーキュラーエコノミーを、たくさんの具体的事例を交えて説明してもらい、理解が深まりました」といった声が寄せられた。
<Nov, 2021 新居 未知子(WAO事務局)>
どう提案し、どう動く? いま話題のサーキュラーエコノミー
加藤 佑
ハーチ株式会社・代表取締役
1985年生まれ、東京大学卒業後、リクルートエージェントなどを経て、2015年12月にHarch Inc.を創業。
翌年12月、世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」を創刊。2020年に第一回ジャーナリズムXアワード受賞。サーキュラ―エコノミー専門メディア「Circular Economy Hub」、横浜市のサーキュラーエコノミープラットフォーム「Circular Yokohama」など複数事業を展開。
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