若者の感性から未来をデザインする方法(前編) ~若者インサイトの今とこれから~
若者が生きる“らしさ”の時代
「前述の4つの価値観に共通するのは、これまでの常識がどんどん常識でなくなっていった時代に育ったことで、今の若者に“前提を疑い、本質を問いかける力”が身についてきたということ。これまでの時代は当たり前とされてきたことに対して、“自分にとって本当に必要か?”を問うようになっているんです」。
そんな若者にアプローチするためにはどうすれば良いのか、「メディア」と「消費」の観点からの考察を教えてくれた。
「メディアにおいて大事なキーワードは『For Me』。彼らにとっては本当に”自分にとって”の情報であるかが重要です。そのため人気タレントやメガインスタグラマーよりも自分と同じ世界観を持つ自分に近い人の情報、メディアからの一方的な情報ではなくフィルターのかかっていない生の一次情報を信用します。また、一か所からの一方的な発信は独りよがりの印象を与えるため響かない。彼らの信用を得るには複数の情報源から様々な文脈背多面接触し、判断材料や興味のフックをつくることがポイントです」。
一方、消費においては『Reasonable』であるかどうか、つまり単なる安さではなく、彼らにとって”お金を払うだけの理由があるか”=”本当に必要か”が重要だという。
「モノが飽和し、機能的に優れたものが安く手に入る時代なので、消費はモノを消費することが目的ではなく、自分らしさを表現するための手段として機能するようになりつつあります。自分の好きなモノやコトに積極的にお金を使う“キャラ立ち”消費もその一つです」。
そして吉田さんは、“らしさ”の時代を生きる若者を象徴する3つのI、「Individual」「Identity」「Inclusive」を紹介して今回の話を締め括った。
「これまでのように、“みんながこうしているから”とか“男だから”“女だから”といった規定や属性から解放された彼らを象徴するのが“群”ではなく“個”の考え方であり、彼らと向き合う際に大事にするべき考え方です(Individual)。また、ただ独立しているわけではなくそこにカラーがあるか、自分らしさがあるかどうかがとても大事(Identity)。一方で“自分らしさ”を見つけられないことによる苦しみを抱える若者もいて、それが新たな格差として顕在化しているとも言えます。そしてそのIdentityを押し付け合うことなく、皆がそれぞれの多様性を認め合っている(Inclusive)。多様性を認め合えるということは互いのバイアスを崩し合えるということ。経営においてD&Iが重要だと言われるのも、その方がイノベーションの確立が上がるからですが、そんな難しいことを考えなくても『その方が楽しくない?』という価値観を搭載しているのが次の世代なのかなと思います」。
限られた時間の中で、若者の傾向と向き合う上でのヒントを教えてくれた吉田さん。今回紹介できなかったより詳細な内容については、ぜひ本を手に取ってみてほしい。
*『若者離れ 電通が考える未来のためのコミュニケーション術』
(Amazonページ)
<(Sep, 2021 鈴木 潤子(WAO事務局)>
若者の感性から未来をデザインする方法(前編) ~若者インサイトの今とこれから~
吉田 将英
㈱電通 電通ビジネスデザインスクエア コンセプター
前職広告代理店にてクライアント企業のブランド戦略立案に従事した後、2012年電通入社。社会や組織の課題をそこに関わる全ての人のインサイトと関係性に着目して解決する「関係性デザイン」を専門とする。特に若者世代のインサイト研究を得意とし、電通若者研究部のメンバーとして10~20代の若年層の心理・動向分析とそれに基づくコンサルティング/プランニングに従事。「電通若者研究所(通称ワカモン)」メンバー。
電通ビジネスデザインスクエアでは経営者のパートナーとして、企業の未来創造にまつわるプロジェクトを多数手がける。著作に『若者離れ』(エムディエヌコーポレーション)、『なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか』(宣伝会議)。
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