SDGs達成に向けて
~官民連携でつくる社会環境~
民間企業の役割
最後に、官と民の役割や、民間企業に期待することは何か伺った。
「政府や省庁は、企業の倫理では超えにくい部分や利害関係の対立が起きてしまうこと、つまりは1社単独では取り組みにくい部分に入っていく必要があると考えています。例えばレジ袋削減については、消費者に不便を強いると捉えられてしまう懸念からなかなか1社では取り組みにくい。そこで政府や省庁として方針を提示し、消費者側の啓発もポスター等を通じておこなっています。木材利用についても、現在の日本の人工林は40%が柔らかい杉の木で、花粉症などの課題もあるため、今後はより多様性のある森林を増やして活用を推進したいと思っています。スマート農業などではICTの知恵や技術が必要になってくるので、全国でモデル地域を作って実験しており、いままで農林水産省が関与してこなかった事業者との交流や連携が生まれています」。
そんな中で、民間企業に期待することは何だろうか。
「国としてできることは、法律や制度を整備することや、補助金を出すことで社会変革の最初の一歩をつくることです。そこでイニシャルモデルをつくったら、そのあとのビジネス展開は民間企業に頑張ってほしいと思っています。イニシャルモデルを作るための補助金の確保や実証実験のための交通整理などの支援は我々で行いながら、ゆくゆくは補助金がなくても事業としての持続的なモデルを民間企業の皆さんとつくっていきたいですね」。
SDGsという共通の言語ができたことで、政府省庁の取り組みを伝えやすくなったと長野さんは言う。
「SDGsが社会の共通言語になり、みんなが課題を共有することで、今までにない新しい知恵が加わって取り組みが増えることを期待しています。官民で連携して、社会全体として社会環境の変革に取り組めたらと思います」。
<Jan.2020 金子悠太(WAO事務局)>
SDGs達成に向けて
~官民連携でつくる社会環境~
長野 麻子
農林水産省 林野庁 林政部 木材利用課長
1994年東京大学文学部フランス文学科卒業後、農林水産省入省。バイオマスをカスケード利用する国家戦略策定に携わった後、(株)電通に出向してソーシャルビジネスの企画、食料産業局食品産業環境対策室長としてフードロス削減に向けた国民運動を手がけるなどして、2018年7月から林野庁木材利用課長に。公共建築への木材利用、木づかい運動、木材輸出など木材需要の拡大に向けて全国営業中。
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