人とロボティクスの未来
AI×ロボットによる新たなマーケティング手法を探る
ロボットと協働する世界の実現のために
だがロボットの実証実験やサービス化をおこなっていく上では、難しいことも多いと中野さんはいう。
どんなに素晴らしいロボットであっても、環境を整えなければ現場で使うことはできないからだ。
「安全面を考えたら、人がいるキッチンにいきなりロボットを入れることなんて絶対にできません。そこで私たちは『&robotシステム』というロボットシステムを開発しました」。
専用設計の約2.4m四方のKIOSK筐体で、調理法に合わせたロボットのプログラミングを予めセットした状態で納品でき、これ一つで喫茶店1軒分の機能を実現できるという。また、調理機器の変更をすることでコーヒー以外のメニューにも対応できるように設計されている。
「最近の調理器具は便利になっていて、ご飯を盛ったりカレーのルーをかけたり、ビールを注いだりと、ありとあらゆることがボタン一つでできるようになっています。ところが最後にそのボタンを誰かが押さなければならない。そのため飲食業界では人手不足にもかかわらず相変わらず人が介在しているという現状があるのですが、こうした課題もこの仕組みがあれば解消することができると思っています」。
最後に“スマホのように誰もがAIロボットを使う時代はいつ頃やってくると思うか”という会場からの質問に答える形で、同社の今後の展望について語ってくれた。
「インターネットやスマートフォンの普及予測ができなかったのと同様に非常に難しい質問ですが、ロボットやAIを取り巻く環境は加速度的に改善してきているので、おそらく2025~35年頃には一気に普及しているのではないかと思います。ただ一方で、そのためには先ほども話した環境整備という課題があります。ロボットをつくる事業者はたくさんいても、ロボットを使うこと、導入することを本気で考えている事業者は業界にあまりいません。ですが、そのロボットをどう使うかという部分が私たちはもっとも大切だと考えています。我々はロボットをつくりませんし調理機器もつくりませんが、代わり既にあるものを組み合わせて実際の導入に向けてロボットを“使う”ということを真剣に、リアルに考えてPDCAを回すことにトライし続けていきます。それが私たち“ロボティクス・サービス・プロバイダー”としての役割なのです」。
今からそう遠くない未来、ロボットが当たり前のように接客や調理をして、人間と共存する日がやってくるのだろうか。今回Sawyerのデモを見てお二人の話を聞き、その情景をイメージしやすくなった参加者も多かったようだ。
最後まで様々な質問が飛び交い、未来への期待が膨らむなか本イベントは終了した。
<Oct.2019 鈴木 潤子(WAO事務局)>
人とロボティクスの未来
AI×ロボットによる新たなマーケティング手法を探る
中野 浩也
株式会社QBIT Robotics 代表取締役社長/CEO
三菱重工業入社、その後、国内最大手のSIer勤務後、
ソフトウェア開発会社やクラウドサービス提供会社などを設立。
直近ではハウステンボスの情報システム部門責任者として「変なホテル」、変なレストラン」の運営に携わる。現職では、QBIT Roboticsの最高経営責任者として、陣頭指揮を執る。
広屋 修一
株式会社QBIT Robotics 取締役/CTO
NECにてソフトウェアの研究開発に従事(途中Stanford大学客員研究員も経験)。NEC子会社や電通子会社等で約10年間代表取締役を務め、デジタル・マーケティングに精通。
自宅では8台のロボットと暮らす、大のロボット好き。現職では、QBIT Roboticsの開発部門を牽引し事業戦略を実行する。
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