EVENT REPORT

Jan 2022

どう提案し、どう動く? いま話題のサーキュラーエコノミー

バタフライダイアグラムについて

バタフライダイアグラムについて

続いて、加藤さんはサーキュラーエコノミーの「バタフライダイアグラム」という概念を説明してくれた。


バタフライダイアグラムは、三つの階層に分かれていて、上から1つ目が経済システムにインプットする資源、2つ目が、経済システム、3つ目が、経済システムから出てくる負の外部性、廃棄や環境汚染などを指している。

さらに、1つ目の階層のインプットする資源には二種類あり、左側に示されているのが、再生可能な資源(植物など)、右側が、ストック資源(枯渇性資源)化石燃料、金属などである。

こうした資源をつかって製品がつくられているのだが、リニアエコノミーの仕組みでは、使用後は捨てられ、3つ目の階層に廃棄されていくことになるが、サーキュラーエコノミーでは2つ目の階層の中で資源をできるかぎりリユース・リペア・リファービッシュ・リサイクルなどで循環させ、最終的には、3つ目の階層に落ちていく廃棄物をゼロにしていくことを目指している。

また、重要なのが左側と右側のサイクルを分けることだ。左側のサイクルは、土に還るバイオスフィア(生物圏)を通じた循環だが、右側のサイクルは、土に還らない(還りにくい)循環となっており、例えば、紙とプラスティックが混合した素材を作ると、一緒にリサイクルできないため、最初から分けてサイクルをまわせるようにしておくことが非常に大事になる。

「左側の生物サイクルでいうと、例えばコットンの洋服があります。リユースなど何回も重ねて使い終わったら、クッションの詰め物になり、その次は断熱材の材料となり、最後は燃やすことでエネルギーとして回収するなど、できる限り循環させるのが理想です。
一方、右側の技術サイクルでは、ヨーロッパの例でいうと、製造された携帯電話のうち、85%が行先不明または埋め立てされるリニアの状態のなか、例えば50%は循環サイクルに戻し、19%がリユース、21%が再製造、10%がリサイクルといったようにサーキュラーエコノミーへと移行できないかが模索されています」。

「このように、バタフライダイアグラムは、実際の製品を落とし込んで考えてみると分かりやすい。例えば金属と木材でできた家具だとしたら、最初から分離できるように設計しておかないと、それぞれのサイクルを回せません。では金属のサイクルを回すとしたら、どう回していくか?など、具体的な製品を一つひとつダイアグラムに当てはめて考えていくことができます」と加藤さん話す。

画像:エレン・マッカーサー財団「Circular economy diagram」を基に作成
(https://ellenmacarthurfoundation.org/circular-economy-diagram)

サーキュラーエコノミーのビジネスモデル5分類

サーキュラーエコノミーのビジネスモデル5分類

また、サーキュラーエコノミーには、アクセンチュア社が提示するビジネスモデル5分類というものがあるという。

「サーキュラーエコノミーのビジネスモデル5分類」
1・循環型サプライ
2・回収とリサイクル
3・製品寿命の延長
4・シェアリング・プラットフォーム
5・サービスとしての製品

「一番のポイントになるのは3つ目の製品寿命の延長です。例えば電球は、約100年前の時点で2500時間ほど点灯させられる技術があったにも関わらず、あえて1000時間で切れる電球を作ろうという合意がされたという話があります。なぜなら、電球は切れるまで新しい電球が売れなくなるからです。製品寿命を延ばすことが、経済的に合理的な選択ではないわけですね。これがリニア型の経済モデルの欠陥となっているのです」。

この問題を解決する手段が、4つ目の「シェアリング・プラットフォーム」と、5つ目の「サービスとしての製品(Product as a Service(以下PaaS))」だ。二つに共通するのは製品の所有権をユーザーに渡さないということ。リースやシェアリング、サブスクリプション、など、ユーザーが必要なときに必要な分だけ使うビジネスモデルに変えていくのだ。

「製品の所有権をメーカーがもつことで今後はロジックが180度変わり、製品寿命を延ばすほど、一つの製品をより多くのユーザーにより長く貸し出せるようになるため、資源あたりの収益性が高まります。環境に良いことと経済合理性がマッチするのです」。

さらに、シェアやPaaSを実現するには、ビジネスモデルの2つ目「回収とリサイクル」が必要になり、回収した原料だけではモノが作れなければ、再生可能な原料を使用する1つ目の「循環型サプライ」が必要になってくる。

「例えば50%を回収した素材でつくり、残りの50%を再生可能な生物資源由来の素材でつくるといった形が考えられます。こうした考えがこのビジネスモデルにはあり、1~5はすべてが繋がっていて、どれか一つに取り組むというよりも組み合わせていくことができます」。

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どう提案し、どう動く? いま話題のサーキュラーエコノミー

加藤 佑

ハーチ株式会社・代表取締役
1985年生まれ、東京大学卒業後、リクルートエージェントなどを経て、2015年12月にHarch Inc.を創業。
翌年12月、世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」を創刊。2020年に第一回ジャーナリズムXアワード受賞。サーキュラ―エコノミー専門メディア「Circular Economy Hub」、横浜市のサーキュラーエコノミープラットフォーム「Circular Yokohama」など複数事業を展開。

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