発達障害を知る
~“障害のない社会”の実現に向けて~
事実として、目の前にいる“そのひとり”を幸せにする
LITALICOは、社会の側を変革することで、今は障害者とされる人でも幸せに生きていけるようにしたいと、以下の3つのアプローチで解決を目指している。
①事業的解決:事実として目の前にいる“そのひとり”を幸せにする
②技術的解決:技術や学術の力でスケールする
③政策的解決:社会そのもののあり方を再定義する
1つ目の「事業的解決」は、LITALICOが自社の事業として取り組んでいる方法だ。
「障害のある方の現状として、就職率が低い、福祉施設で働いても低賃金であるなどの課題があります。でも実は潜在的に働ける障害者は多い。私たちが取り組む“LITALICOワークス”は、その人と企業の間に入り、その人が働けるようにサポートする事業を展開しています。また、大人の就労支援だけではなく、発達が気になる子どもたちが、自分の得意な学び方やコミュニケーションの仕方を見つけられるようにサポートする事業もおこなっています。発達障害の子どもたち一人ひとりに合わせた放課後教室“LITALICOジュニア”や、ITとものづくりに特化した教室“LITALICOワンダー”は、その子の個性を尊重して、得意を伸ばしていく教育事業です」。
発達障害のある子どもたちの中には、大人になって後天的にうつ病や統合失調症といった二次障害が生じてしまうことが多いという。その理由として、成長の中で適切な対処方法を構築できなかったり、周囲の環境を整えられなかったりしたことが挙げられるそうだ。だからこそ、発達障害のある子どもたちにとって、子どものころに適切な対処方法、自分なりの得意なやり方を見つけることが非常に重要となってくる。
「本当の障害は教育の考え方にあるのではないか?私たちは、みんな同じようにできるよう個性を強制する教育ではなく、個性や得意を伸ばしていく教育が必要だと考えています。そういった考え方を共有できれば、社会を変革できるのではないでしょうか」。
2つ目の「技術的解決」は、まさにその考え方を共有し、スケールをめざす解決方法だ。その解決方法としてLITALICOでは、ポータルサイト、アプリ、学術研究チームなどをおこなっている。
ポータルサイトでは、発達が気になる子どもを育てる保護者にとって必要な情報をみんなで共有するサイト“LITALICO発達ナビ”等を運営。アプリ開発では、教室運営で得た知恵や専門的知見を、家庭でも使いやすいように提供し、届けていくことを目指している。また、専門的知見を深める学術研究チーム “LITALICO研究所”を開設。研究という形でエビデンスにしていくことで、社会変革のスピードを変えようとしている。
他にも技術的解決の取組みとして、企業とのアライアンスや出資も活発におこなっている。“障害のない社会”に向けた社会課題がたくさんある中で、それらに様々な領域で取り組んでいる企業とアライアンスを組み、群れをつくってビジョンを追いかけている。
3つ目の「政策的解決」については政策提言を積極的におこなっていると話す鈴木さん。
「政策的解決は社会そのもののあり方を再定義してゆくことです。例えば、発達障害の専門の教員を増やす署名運動を行い、1か月弱で総数30,729人の署名を集めました。この署名が功を奏し、文部科学省が予算を獲得。10年で1万人の教員増を実現できました」。
まず、自分たちで目の前のその一人の課題を解決し、その知見をスケールさせ、仲間を増やして社会を変革する。これがLITALICOの考える社会課題解決の方法だ。
発達障害を知る
~“障害のない社会”の実現に向けて~
鈴木 悠平
株式会社LITALICO 社長室チーフエディター、NPO法人soar 理事。コロンビア大学大学院 公衆衛生 保健政策専攻 修士。
1987年生まれ。一人ひとりが<わたし>の物語を紡いでいける社会を目指して、執筆・編集業を中心に活動。現在は、株式会社LITALICOおよびNPO法人soarでの事業運営や文筆活動を通して、障害や病気、その他さまざまな要因で生きづらさを感じている人たちとかかわりながら、 人が物語を通して回復していくプロセス、<わたし>と<あなた>の物語が響き合うなかで新たな希望が見出されるプロセスの探求、伴走、創出をこころみている。
株式会社LITALICO:http://litalico.jp/
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