SDGs目標12 「つくる責任つかう責任」 について考える
“捨て方をデザインする” ものづくりのイノベーション
廃棄物事業者、矛盾への挑戦
もし細かい仕分けを行わなかったら、どうなるのか。大部分の廃棄物は、焼却処分になるという。しかし現在の日本の技術であれば、焼却処分による環境への悪影響はほとんど発生しない。
ではなぜナカダイさんは、それでも細かい仕分けを行っているのか。その理由は、廃棄物事業者のビジネスモデルに疑問を感じたことがきっかけだという。
「廃棄物事業者の売上は、廃棄物の量に比例します。つまり、廃棄物事業者としての事業規模を拡大しようとしたら、廃棄物を大量に集めなければならないのです。このビジネスモデルに気付いたときに、『嫌だな』と思いました」。
そこで中台さんは、「廃棄物を細かく仕分けして、素材を生産する会社になる」ことを目指し始めた。
「廃棄物から素材を生産するためには、現在のリユースやリサイクルだけでは限界があると感じ、『新しいモノの使い方を創造する』ことも模索してきました。廃棄物には、その背景や地域性など、様々な魅力があります。それをデザインや教育へ展開できないかと考え、行動してきました」。
その集大成として中台さんは、廃棄物の魅力を伝えていくことをコンセプトとした「モノ:ファクトリー」を設立した。
“捨てる”と“使う”をつなぐ仕事
「ナカダイの仕事は、リサイクル事業ではありません。『“捨てる”と“使う”をつなぐ仕事』です」と、中台さんは語る。
廃棄されるモノを必要とする人につなぐこと、廃棄されるモノの価値を改めて創出することを仕事とする中台さんは、様々な企業とのコラボレーションを実現している。
アニメ映画とコラボレーションをしたワークショップや、百貨店のディスプレイ展示、建築や家具メーカーへの素材提供など、その連携は多種多様だ。
これらの連携事例には、それぞれストーリーがある。そのひとつとして、廃校の跳び箱からテーブルが生み出されたストーリーを教えてくれた。
「現在、少子化が進み、学校の統廃合が加速しています。廃校から大量の廃棄物が出るのですが、これらをただリサイクルして終わらせることに疑問を感じました。そこで、家具デザイナーと連携して、この社会課題を問いかけるプロダクトを作ったのです」。
目指すビジョンは、循環を前提とした社会の構築
中台さんは、「循環を前提とした社会の構築」を目指している。
「今の社会は、新しいモノが次々と生み出されています。しかし、新しいモノが生み出されるだけだと、この世の中はモノであふれてしまいます。その理屈で考えると、新しいモノが生み出された分だけ、廃棄物も生み出されているのです」。
新しいモノが生み出されることは、決して悪いことではない。しかし、その先が「廃棄」への一方通行で良いのだろうか。廃棄の前に、そのまま使う「リユース」、修理して使う「リペア」、組み合わせて使う「リファービッシュ」、別の用途で使う「リサイクル」など、選択肢はいろいろある。
「モノの最期は、埋めたときです。埋めるまでの時間を延ばすことが、取り組むべき第一の課題であると考えています」。
SDGs目標12 「つくる責任つかう責任」 について考える
“捨て方をデザインする” ものづくりのイノベーション
中台 澄之
株式会社ナカダイ 常務取締役/株式会社モノファクトリー 代表取締役
1972年生まれ。東京理科大学理学部卒。証券会社勤務を経て、ナカダイに入社。
“リマーケティングビジネス”を考案し、“発想はモノから生まれる”をコンセプトに「モノ:ファクトリー」を創設。使い方を創造し、捨て方をデザインするビジネスアーティストとして、さまざまな研修やイベントなどの企画、運営を行っている。
株式会社ナカダイ http://www.nakadai.co.jp/
モノ:ファクトリー - 発想はモノから生まれる http://monofactory.nakadai.co.jp/
ブログ「ナカダイの産業廃棄物日記」https://www.axismag.jp/posts/serial/nakadai-notes
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