MEANING DRIVEN DESIGN~意味が先行するデザイン~
未来からの逆算で生まれるデザイン
未来からの逆算で生まれるデザイン
イベントでは、MEANING DRIVEN DESIGNの実践によって生まれた自身の作品を幾つか紹介してくれた。
■The Mirror of Truth
私たちが毎日見ている鏡。しかし鏡に映し出された自分は、左右反対であり、本来の自分ではない。「The Mirror of Truth」は、そうした矛盾を解消し、人が見たままの自分が映るという鏡だ。
「鏡って、そもそもなにをする道具なのかという“意味”を考えた時に、他者が自分のこと をどのように見ているかを確認するための道具なのではないかと思いました。でも僕が右手を上げると鏡の僕は左手を上げるわけですね。僕らは完全に対称にはできていません。髪の分け目も、ほくろも、骨格も、毎日人は他者が見ている自分と反対の像を錯覚して確認しているという矛盾があります。その矛盾を光学設計技術によって、光をとどのように脳の中で画像として認知しているかなど、計算と実験を繰り返すことで1から紐解き、普通の鏡と意匠を変える事なく、他者が見ている自分が映るという本来の意味に寄り添った鏡を生み出しています。
■Magic Calendar
「Magic Calendar」は紙とアプリ、両方のカレンダーの良さを組み合わせたカレンダーだ。現在、「Magic Calendar」は、量産に向けて進行中の段階であり、販売時期や価格については未定だが、既に市場の注目度が高い作品である。
「紙のカレンダーの良さは目をやればすぐに日付や予定がわかることです。一方で予定を管理するには毎日書き込まなきゃいけない。その煩雑さから、多くの人はアプリでスケジュールを管理していたりするのですが、実際にアプリのカレンダーを見る時にはいちいちロック解除して立ち上げる行為を一日に何度もやらなきゃいけない。この両方 の良いところだけを組み合わせられるような、アナログとデジタルの境目が溶けたような カレンダーができないかと考えたのが『Magic Calendar』の始まりです」。
坪井さんがこの「Magic Calendar」にこだわったことがある。それは“紙の質感”だ。
「私たちが生活する環境に馴染むためには、身体で知覚されるアナログな紙の質感や感覚 を再現するというテーマはとても大事なことでした。テレビのようなディスプレイが壁に たくさんついている状況を不思議と人は喜べない。私たちがその物体を見て、「ディスプレイ」ではなく「紙」であると知覚するための条件とは何なのかを全て列挙し、時間をかけて一つずつ設計することから始めました」。
(Magic Calendar紹介サイト)
■SAKURASAKU glass
坪井さんの最初の代表作となった「SAKURASAKU glass」。このグラスは底面が桜の花びらの形になっているため、結露がデザインとなり、気づくと机の上に桜が咲いているというグラスだ。
「桜の形のグラスを作ろうではなく、人がグラスを使うと いう行為に取り巻く、分脈や環境をデザインしたものが『SAKURASAKU glass』です。人が一杯の水を飲む時に一気に飲むことは少なくて何回かに分けて、無意識にテーブルの様々な場所にグラスを置きます。 また、コップが汗をかく結露の現象が多くの人にとって不快に感じられていたりもします。 そういった飲料を飲むという行為やコンテクストそのものをデザイン対象としました。普段迷惑に感じられる現象が、デザインを通して緩和されたり、テーブルに花が咲いている状況を知らぬ間に自分自身が操っていたことに気づいた時に、何か当たり前の日常が未知化されたり、再発見されることを期待して製作しました」。
MEANING DRIVEN DESIGN~意味が先行するデザイン~
坪井 浩尚
PRODUCT DESIGNER。禅の思想を背景にアート・サイエンス・テクノロジーと様々な領 域を自在に横断し、対象の環境を柔軟且つ鋭く読み解き、モノに独特の生命を吹き込むア プローチに定評がある。主な代表作に、Google社の電子デバイス「Magic Calendar」、 Meizu社のスヒピーカー「Gravity」、KDDI社の携帯電話「LIGHT POOL」、プロダクトブランド100%への「SAKURASAKU glass」など多数。
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