「防衛産業」と「民間企業」をつなぐ
デュアルユース技術の時代
デュアルユース技術の時代の到来には、「軍事における革命(RMA:,Revolution in Military Affairs)とネットワーク中心の戦い(NCW:Network-Centric Warfare )」といった背景があると小関さんは説明する。
1998年末、米海軍中将アーサー・セブロウスキーは、「NCW(Network-Centric Warfare)」という革新的軍事コンセプトを提唱した。
NCWとは“ネットワーク中心の戦い”を意味する。全ての軍事装備や軍隊に情報デバイスを装備させることで、ネットワークを統合。そのことによって戦況の共通認識が可能となり、適切な意思決定の迅速化、さらには効率的に戦力を運用できるという考え方。こうした軍事分野でのICT導入の背景をもとに、現在のデュアルユース技術の時代が訪れたというのだ。
「デュアルユース技術のなかで、軍事技術から民生技術に活用した身近な具体例をあげると、GPSがあります。当初、GPSはミサイルを正しい位置に着弾させる軍事用としてアメリカが運用を始めました。その後、GPSは民間にも開放され、いまでは多くのアプリケーションに使用されています。また、COTS品(commercial off-the-shelf)と呼ばれる、民生技術を軍事技術に活用している例も多くあります。最近では、VR・ARや3Dプリンター、AIなどが軍事用として活用されたり、アメリカでは無人機を遠隔で動かすために家庭用のゲームコントローラーが使われたりもしています」。
軍事技術から民生技術への活用をスピンオフといい、民生技術から軍事技術への活用をスピンオンという。従来はスピンオフの流れが市場でのイノベーションを起こしてきたが、最近では民生技術の発展スピードが加速化され、世界的にもスピンオンの流れが広がりをみせてきているというのだ。
こうした流れとともに、昨今、国内でもデュアルユース技術の議論が多く交わされている。防衛サロンなどの活動を通して、防衛産業と民間企業を繋ぐ活動を行っている小関さんは、そうした議論について、自身の見解を述べてくれた。
「確かに防衛産業については、軍事のイメージが強く、そのためデュアルユース技術について否定的な意見も多くあります。ただ、そうした否定的な意見についても丁寧に聞く姿勢を心掛けています。大学の先生などは理論的に矛盾のない歴史的経緯にもとづく意見を仰っていただけるので、その意見は真摯に受け止めるに値する内容です。一方で、世界の動向や技術的な発展の現実も注視し、考えていくことも必要であり、こうした議論の終わりはなく、この先も続けていかなければならないと思っています」。
小関さんのトーク終了後、株式会社シンカの代表取締役、町井則雄さんとのクロストークがおこなわれ防衛産業に関わる様々な意見交換がおこなわれ、イベントは終了した。
<Jun.2018 小出 伸作(WAO事務局)>
「防衛産業」と「民間企業」をつなぐ
小関 清志
株式会社HORIZONディフェンス 代表取締役。大学卒業後、大手通信会社に勤務。約20年間にわたり、システムの設計や技術提案、コンサルティングなどさまざまな業務に携わる。防衛省を顧客とする取引を多数担当した経験を生かし、防衛装備のエンジニアリング・コンサルティングを手掛けるHORIZONディフェンスを設立。
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