「飼い主のいない猫」を知る
野良猫の問題を知り、行動へ
嘉代さんが野良猫問題を知るきっかけは、カラスに襲われている子猫を助けたことからだった。
「当時、ご近所さんで野良猫にエサをあげている方がいまして、そのなかの猫が子猫を産んでしまいました。ある日、その子猫の一匹がカラスに襲われているのを偶然に目撃してしまった私は、子猫を助け、看病を続けました。しかし、大怪我をしていた子猫は9日間で亡くなってしまったんです」。
嘉代さんは、せめて離ればなれになった子猫のきょうだいを飼ってあげようと近所を探し回ったが、見つかることはなかったという。そうしたなか、インターネット上で猫の里親募集サイトがあることを知った。
「そのサイトを通して、かわいそうな猫たちの問題を知ることになりました。私たちはそこで、公園に捨てられていた『とら』と、ガレージに監禁されていたところを保護された『しま』と名付けた2匹の子猫を引き取ることにしました」。
「しま」と「とら」たちとの出会いを通して、野良猫の問題を知ることになった嘉代さん。しかし、その後、自分たちが問題の当事者となってしまう事件が起こってしまう。
「あるときから家に寄りつく野良猫に、夫はかわいそうと思いエサをあげていました。エサをあげていた猫は生後1年ほどの子猫だったんですが、その猫が子どもを産んでしまったんです。野良猫の繁殖がどのような問題を起こしてしまうか、既に知っていた私がまず思ったのは“ご近所から怒られたらどうしよう”ということでした。かわいそうと思ってやっていたエサやりが、社会からは偏見の目で見られてしまうんです」。
猫の問題を知り、そして、その問題の当事者となってしまった亀山さん夫妻。しかし、職場での“ホームレスの支援プロジェクト”を通して、問題解決の行動は、いつかは偏見を覆すこともできると身を以て経験していた嘉代さんは、この問題に向き合っていく決心を固め、いまにつながる行動へと移していった。
野良猫のなにが問題なのか?
野良猫になる主な理由は、「放し飼い」・「飼育放棄」・「迷子」といった、人の責任にある。そして不妊手術がおこなわれていない猫たちは繁殖し続けるため、野良猫の増加はさらに深刻化していく。
増えていく野良猫問題を解決するためには、「行政での処分」や「エサやりの廃止」をおこなえばいいのでは、との意見もあるが、それでは問題の本質は解決できないと嘉代さんは説明する。
「外にいる猫は、飼い猫か野良猫かわからないということもあり、行政(東京都動物愛護相談センター)では引取りはできません。エサやりをやめても、猫はゴミをあさってしまったり、他の地域に移ってしまったりと、根本的な解決にはいたりません」。
また、野良猫に対する印象は、人によって「好きか嫌いか」の両極端に分かれるため、課題解決は複雑になっていく。
「野良猫をかわいそうな生き物と捉える人がいる一方で、糞尿やゴミを荒らしたりなどの被害を受ける人たちは、猫のことを“害獣”と捉えていたりもするのです。どっちが良いとか悪いということではありません。ただ、どちらにも共通しているのは、“野良猫を減らしたい”ということです」。
そして、亀山さん夫妻が辿り着いた解決策が「地域猫活動」であった。
「地域猫活動」とは、野良猫の問題を、猫が好きか嫌いかで議論するのではなく、“地域の環境問題”として住民・ボランティア・行政が協力しながら飼い主のいない猫を適正管理し、暮らしやすいまちづくりをめざす活動のことをいう。こうした「地域猫活動」の実現が問題解決につながっていくと確信した亀山さん夫妻は、地元の練馬区で「地域猫」のボランティ活動を推進していった。
「飼い主のいない猫」を知る
NPO法人ねりまねこ
理事長 亀山知弘、副理事長 亀山嘉代。
東京都動物愛護推進員。練馬区地域猫推進ボランティア。練馬区と協働で、飼い主のいない猫対策を進める公認ボランティア。月間50万アクセスの人気ブログ「ねりまねこ・地域猫」や、講演会で猫問題の解決に向けて情報発信を行う。
ねりまねこオフィシャルブログ「ねりまねこ・地域猫」http://ameblo.jp/nerimaneko/
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