EVENT REPORT

Jul 2018

女性企業家が伝える「自分ならでは」の事業

株式会社TOKIMEKU JAPAN、代表取締役社長の塩崎良子さんは、乳がんの発病から治療までの経験をきっかけに起業。「人生のいかなる時も自分らしく」をミッションに掲げて、医療・介護現場の女性や、患者向けの製品やギフトボックスの開発から販売までを展開している。

今回のWAOでは、そんな塩崎さんをお迎えし“自分ならではの視点”をどのように磨き上げ、起業するまでに至ったのかをお話いただいた。

転機はがん患者がモデルのファッションショー

転機はがん患者がモデルのファッションショー

転機はがん患者がモデルのファッションショー

「もしあなたの人生があと5年しかないとしたら、どんな場所でどんな仕事をして、残りの人生を過ごしたいですか?」

冒頭、会場にそう投げかけた塩崎さんは、20代前半に憧れだった洋服のバイヤーとして世界中を飛び回り、25歳でアパレル会社を起業。その後、セレクトショップやドレスのレンタルショップの経営など事業の幅を拡げ、充実した毎日を送っていた。しかし2014年の冬、乳がんを宣告された塩崎さんの人生は一変した。

「それまでは、おしゃれが大好きで、毎日東京の街を謳歌する普通の女性だったのに、抗がん剤治療で髪が抜け、胸も失い人生は一変。放射線装置の重い扉を開ける度に、私の心はどんどん惨めで荒んだものになっていきました」。

そしていつの間にか“自分らしく”というより“患者らしく”生きている自分に気づいたという塩崎さん。そんな時、思いがけない転機が訪れた。

「私がアパレル関係の仕事をしていたことを知る主治医から、患者さんをモデルにしたファッションショーの企画をお願いされたんです。正直初めは“患者さんはそんなことしたいのかな”とも思いましたが、どうせやるなら、患者さんが人生最高の主役になれるような、本物のファッションショーにも負けないショーにしようと決めました。いま思えば、私自身ががん患者の枠組みを抜け出すために作っていたような気がします」。

結果、たくさんの患者さんがステージに上がってくれ、ショーは大成功。なにより、病気で自信を失った患者さんたちが、ものすごく輝いていたという。

「私はこのステージで涙が止まりませんでした。ランウェイをいきいきと歩く患者さんたちの姿を見て、これからは多くの患者さんが“自分らしく”生きられるお手伝いを、今後の自分の人生をかけてやっていこうと思いました」。

こうして塩崎さんは人生二度目の起業を決意した。

自分が感じていた不満を事業に

自分が感じていた不満を事業に

自分が感じていた不満を事業に

起業にあたり、まずは経営の勉強をし直そうとビジネススクールに通い始めた塩崎さん。その後出場したビジネスコンテストで優勝したことをきっかけに、ベンチャーキャピタルの支援を受け、2016年7月、TOKIMEKU JAPANを設立。この社名には“いまを時めく人になる”という意味と、“人生のしんどい時こそ小さなときめきを集めよう”という意味が込められている。そしていつか世界に羽ばたいていこうということでJAPANを付けたのだそうだ。

「どんなことで起業したかというと、私が闘病中に不満だったことを事業にしました。まずは治療中に使うケア・介護用品。闘病中に髪が全部抜けた時、ケア帽子をかぶるのがすごく苦痛だったんですね。かぶった瞬間に、おしゃれかどうかという以前に、“自分は患者だ”ということを認識してしまうファッションだなと思ったんです。患者さんたちが病気になる前に洋服を普通に買うような感覚で手に取れるようなケア・介護用品があってもいいんじゃないかと思いました」。

そして、塩崎さんは「KISS MY LIFE」というケア・介護用品ファッションブランド立ち上げた。いまでは、ケア帽子や杖、車いすに乗る方向けの洋服など、さまざまなアイテムの展開を行っている。

「患者さん目線で制作していますが、患者さんではない方が使っても使い心地の良いブランドとして広めていきたいと思っています。今春から大手のアパレルメーカーとの提携も決まり、介護用のパジャマや下着などの制作も始めました。ケア・介護用品市場に新しい風を吹かせて、明るい彩りを加えたいと思っています」。

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女性企業家が伝える「自分ならでは」の事業

塩崎良子

株式会社TOKIMEKU JAPAN、代表取締役社長。2006年 アパレル会社を起業。その後、セレクトショップ(中目黒)、リース専門店(目黒)ドレスレンタルショップ(六本木)等、数々のショップを経営。2014年1月、若年性乳がんを発症。その後、闘病に専念のため、会社を閉める。
2015年6月、主治医の提案で、がん患者の為のサイバーズFASHION SHOWを企画、運営。多くのメディアに取り上げられる。2016年7月、株式会社TOKIMEKU JAPAN設立。2017年1月、ケア・介護用品ブランド『KISS MY LIFE』を立ち上げる。

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