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May 2018

難民問題を考える

ニュースでよく耳にする「難民問題」。私たち日本人にとっては遠い国の出来事のことように感じるが、実は日本にも毎年何万人もの“難民”といわれる人々が入国している。

こうした難民問題をもっと身近に感じてもらうために活動するのは、東京大学大学院生でもあり、~難民の人も歓迎できる社会に~をモットーに活動するNPO法人WELgeeの代表理事、渡部清花さん。今回のWAOでは渡部さんをお迎えし、難民問題について考えていった。

「カラフルなセカイ」をつくりたい

「カラフルなセカイ」をつくりたい

現在は大学院に通いながらWELgeeの活動に、日々奮闘する渡部さんの原点は両親にあった。

「私の両親は、学校や家庭に居場所がない地域の子どもや若者たちが集まれるコミュニティをつくるNPOを運営していました。学校から帰ると家に知らない子やお兄さん、お姉さんがいたり、その人たちと一緒にご飯を食べたり。それが我が家の日常でした」。

そう話す渡部さんは、大学時代にNGOの駐在員として一年間、バングラデシュのチッタゴン丘陵地帯という地域で、ジュマと呼ばれる先住民族との共同生活を送った。その後同地域を対象としたUNDP(国連開発計画)で現地採用され、更に一年間を過ごしたという。

「政府との内戦が終わる1997年まで、チッタゴン丘陵地帯の先住民族は、自分たちの国家に弾圧されてきました。私は、紛争後の平和をつくるという大きなテーマのもと、子どもたちの教育と若者のエンパワメントのために様々なプロジェクトに携わりました。そんな中、居住区から30分の村に入植者からの襲撃事件があったりして、『国家が守らない国民』がいた時に、一体誰がどうしたらいいんだろう?と、20代前半の私は途方に暮れました」。

政府に守る能力がなかったり、政府自体が虐げている人たちに誰がアプローチできるのか。渡部さんはその答えを求め、帰国後「人間の安全保障」を学ぶために大学院に入学。その頃予期せずして日本に逃れてきた難民の人たちと出会い、彼らと共にWELgeeを設立したのだ。

「彼らと出会った時の印象は“かわいそう”ではなく、“可能性が爆発している”というものでした。なぜなら彼らは難民である前に、様々な能力を持った個人だったからです。紛争が起こる前までは普通の暮らしを送っていた人たちで、中には元会社経営者、4ヶ国語話者、プログラマー、デザイナー、NGO職員など、多種多様なスキルや経験を持った方々がたくさんいます。その可能性に、日本社会や難民自身が気づかずにいるんです。彼らとつくる未来はきっともっと面白いだろうなと思い、以降WELgeeでは、彼らとともに“カラフルなセカイをつくる”、ということを大事にしてプロジェクトを進めています」。

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難民問題を考える

渡部清花

1991年、静岡県生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科・国際社会科学専攻。人間の安全保障プログラム修士課程。大学時代はバングラデシュの紛争地にてNGOの駐在員。トビタテ!留学JAPAN1期生。バングラデシュ、国連開発計画(UNDP)元インターン。Makers University 1期生。NPO法人WELgeeを設立し、パワーを秘めた難民の若者たちが、自分で人生をデザインできる仕組みを構築している。2018年3月末にフランス・パリ市庁舎で開催されたグローバル・コンソーシアムINCO主催『Woman Entrepreneur of the Year Award 2018 (2018年女性起業家アワード)』でグランプリを受賞。

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