「新規事業創出には“使命感”“独創性”“実現可能性”といった3つの要素が関わってきます。この3つの要素をすべて兼ね備えている人は、まず存在しません。特に“独創性”の部分は、大企業が苦手とする分野なのですが、それを恥じる必要はありません。“0%から100%”を生み出すという“使命感”を共有するチームの中で、強みを活かせる『役割』が違うだけだからです。あまり語られませんが“独創性”というのは才能でもあります。それを無理に育てようとするよりも、得意な『役割』に集中すべきです」と酒井さんは話す。
新規事業の創出は自分にはできない、関係ないというのは違う。酒井さんは、大企業において新規事業の創出ができる人材になるためには、プロジェクトの経験を積んでいくことが重要だと話す。
「プロジェクトとは、個人や組織がやったことのない『新たなルーティンワーク』をつくることです。つまりは、マニュアルやワークフローが存在しない『新たなルーティンワーク』をつくり出せたかということがプロジェクトの成果物となります」。
この「新たなルーティンワーク」をつくりだすプロセスの経験が“0%から100%”という旅における大企業の「役割」を強化することにつながるというのだ。また、そのプロセスの第一歩は、過去から現在にいたる事例研究を徹底的に勉強することにあると酒井さんはいう。
「プロジェクトとは、ある課題を解決する目的のもと立ち上がっていくものです。しかし、その課題のほとんどは、世界で初めて見つかったものではありません。そこで大事なのが、その課題に対して、世界中の先輩たちがどうアプローチをしてきたかという事例を研究することです。その事例研究とは机の上だけでおこなうのではありません。人に会ったり、課題が起きている現場に訪れたりと、自分の実体験としての研究も大切です。新しいことを前にすすめるためには『新規性』と『進歩性』のいずれかが必要となってきます。そのためには過去から現在にいたる研究をおこない、どこで『新規性』と『進歩性』が求められているかを整理することができないとなりません。これができて、ようやく“0%から100%”の旅における“10%から100%”を任せられる人材になれるでしょう」。