(酒井氏)そうです。多くの人は、“0%から1%”を創り出すことがイノベーションだと思っていますが、それは間違いです。イノベーションは“0%から100%”までのあらゆるとこに存在します。そのイノベーションを引き出すためには、スタートアップと大企業が、事業創造におけるお互いの「役割」を理解し、関係管理をおこなっていくことが必要となってきます。
歴史的に “10%から100%”に最適化されてきた大企業が、“0%から1%”に最適化されたスタートアップと関係管理をおこなうことによって、多数の雇用創出につながる、社会的に本当に意義のある新規事業が生まれてきます。大企業間の競争は、こうした関係管理を通して「スタートアップの目利き」に強くなり“9%から100%”“8%から100%”と、より未熟なスタートアップとも付き合えるようになっていくところで起こっています。この組織学習を進めていくことが、大企業にとって現実的で意味のあるイノベーション人材の育成です。この文脈では「アイデアにあふれた人材」は必要ありません。「進捗管理に強いジェネラリスト」が、多数のスタートアップと関係を構築し、それらをポートフォリオとして管理してる状態が理想です。大企業には、創造力ではなくて「だれが、なにを、いつまでに」というPDCAをしっかりと回転させられる能力のほうが重要です。
大企業のみなさん、胸に手をあててみてください。スタートアップをやるということは、日々の9割は失敗するということです。そうしたことを本音で望んでいますか? 本音では「アイデアにあふれた人材」と「進捗管理に強いジェネラリスト」のどちらを信頼しますか?部下にするなら、どちらのタイプですか?その本音で考えてみたとき、大企業の「役割」に自覚的であることの重要性が理解できると思うのです。