“本当に戦えるリーダー”になるには
改革において重要な“意思決定”
ここまで日本が得意としてきた改善型について話を聞かせてくれた木村さん。ここからは改革型、いわゆるイノベーションの話へと移っていった。イノベーションにはたゆまぬ改善の積み重ねでどんどん良くなっていく連続的イノベーションと、それまでの常識を一変させてしまう破壊的イノベーションがある。
「破壊的イノベーションは毎回ゼロリセットされ、ゲームのルールがガラッと変わるので、これを起こそうと思うと既得権を持っている人は辛い。なぜならそれまでの自分を壊さなくてはいけないからです。たとえば今のテレビ業界のようなゴールデンの番組の合間にCMを流すというビジネスモデルが今後成り立たないということは彼らもわかっています。でも既存のビジネスモデルが強すぎて、儲けが良すぎて誰も壊せない。そうしている間にネットフリックスのようなものがすっと入り込んでくるわけです。このように、皆さんが仕事をしている領域で強い領域であればあるほど、皆さんがイノベーションを生み出すことは極めてハードルが高い。そしてイノベーションを起こそうとする際の最大の敵はみなさんの内側にいるということです。けれど、もし皆さんが変えなければいけない立場になった時には、たとえ上司であろうと『今変えなければこの先が危ないんだ』ということを勝負して言えるかどうか、もしくは自分が言われる立場になった時に既得権にしがみつかずに状況を見極め、『たしかにこれは自分が変わらなければいけないな』とフラットに、柔軟に変えられるかどうかが分かれ道になります」。
もっとも、難しいのは“取捨選択”して“判断”することであり、それができるかどうかが全てだという。木村さん自身、これまでに多くの企業の事業再生に携わる中でその難しさを目の当たりにしてきた。
「改革的でドラスティックな意思決定は結果が出るまでに時間がかかりますし、結果が出るかどうかもわからず不安なもの。不確実な中で決めていかなくてはいけません。皆さんが改革型のリーダーになるということは、この時間軸のずれを背負いながら、正解がわからなくても右か左かということを決めていく心持ちで日々の仕事に取り組んでいく必要があるということです。リスクを取って『やる』という判断を下すということは本当に大変なことですが、それができずに生き残れなかった企業も、大英断をして再生した企業も見てきた身として、皆さんにはぜひこれから心がけていただきたいと思います」。
“本当に戦えるリーダー”になるには
木村 尚敬
㈱経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー) マネージングディレクター
ベンチャー企業経営の後、日本NCR、タワーズペリン、ADLにおいて事業戦略策定や経営管理体制の構築等の案件に従事。IGPI参画後は、製造業を中心に全社経営改革(事業再編・中長期戦略・管理体制整備・財務戦略等)や事業強化(成長戦略・新規事業開発・M&A等)など、様々なステージにおける戦略策定と実行支援を推進。
IGPI上海董事長兼総経理、モルテン社外取締役、りらいあコミュニケーションズ社外取締役
Japan Times ESG推進コンソーシアム アドバイザリーボード
慶應義塾大学経済学部卒、レスター大学修士(MBA)、ランカスター大学修士(MS in Finance)、ハーバードビジネススクール(AMP)
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