~「不登校」は何が問題なのか?~
不登校の予防薬「おはなしワクチン」
「不登校問題」と「企業」の関係
「学校に行かなくても、人間は成長できるということを、目の当たりにしました」。
自身のお子さんの教育に、「学校」ではなく「サドベリー教育」を選択した蓑田さんは、学校以外の多様な「学び」の選択肢の重要性を、強く感じたという。
現在全国で、不登校の数は13万人を超え、その数は中学校では36人中1人にあたるといわれている。不登校の定義は、病気等の理由を除き、30日以上の欠席を指す。そのため、短い不登校や、いやいや登校している場合など、潜在的な不登校を含むと、数倍の人数がいると考えられる。
「不登校問題は、企業にも影響します」と蓑田さん。
不登校は、誰にでも起こり得る。しかし、心構えがない状態で、突然不登校問題に遭遇した親は、たいていの場合、うろたえる。そこから対処方法を間違えると、悩む子どもと焦る親の間でコミュニケーションがすれ違い、信頼関係が崩れ、家庭崩壊につながるケースも少なくないという。家庭での不安は、仕事のパフォーマンスにも影響を与える。企業が社員の「不登校問題」を放置することは、損失につながると蓑田さんはいう。
「不登校問題」は恐れるに足らず
「親も子も、無意識のうちに、『学校に行かなければ、人生にマイナスの影響がある』と思っているのではないでしょうか。しかし実際には、学校は教育機会の一部に過ぎません」。
そう話す蓑田さんは「オルタナティブ教育」という多様な学びがあることを教えてくれた。「オルタナティブ教育」とは、「教育選択肢」ともいう。学校以外にも、アメリカ発祥の「サドベリー教育」や「自宅学習(ホーム・スクール)」など、教育には様々な選択肢があるのである。
しかし、教育に「学校」という選択肢しかないと思い込んでいると、親は「学校に戻そう」と焦り、子どもは「学校に通えない自分は駄目な子だ」と自己肯定感が下がる。そしてその結果、不登校に発展してしまうというのだ。
蓑田さんは「金魚」を例に、多様な学びの重要性を話してくれた。
「金魚は淡水魚です。もしその金魚を海水の中に入れてしまったら、どうなるでしょう。金魚はとても苦しむと思います。ではその時、金魚が海水に馴染むのを待ちますか?それとも、水を入れ替えて環境を変えてあげますか?」と蓑田さんは問いかける。
「不登校問題も金魚の例と同じです。不登校になった子どもの環境を変えてあげれば、問題が解決する可能性があります。逆に、活き活きと活動し始めるケースもあるんです」と、蓑田さんは力強くいう。
子どもに就学の義務はない
蓑田さんは、法律の面からも「不登校は問題ない」ことを説明してくれた。
「義務教育」とは、誰にとっての義務なのか。実は、就学は保護者にとっての義務であり、子どもに就学の義務はない。子どもにあるのは、教育を受ける権利である。
「義務教育」を規定した「学校教育法」という法律は、終戦直後の昭和22年にできた。戦後の日本は、国を立て直すために、教育を強化することを定めた。しかしこの時、戦後復興の真っ只中。多くの親が、子どもに教育を受けさせるよりも、働きに出すことを選んでいた。そのため、親に対する「義務教育」という概念が生まれたのである。
そこから約70年。時代が変わっても、学校教育法はそのまま生き続けていたが、2016年にようやく変化が生まれた。それが、「教育機会確保法」の制定である。この法律によって、不登校児童に学校以外の教育の選択肢を認め、支援することが定められた。
~「不登校」は何が問題なのか?~
不登校の予防薬「おはなしワクチン」
蓑田 雅之
コピーライター/一般財団法人東京サドベリースクール外部理事
早稲田大学第一文学部卒業、コピーライター。「東京サドベリースクール」の元保護者、現在は外部理事。
子どもがオルタナティブスクールに通うようになり、従来の学校教育のあり方に疑問を持ち、教育分野の研究に着手。自立した人間を育てるための保護者のあり方を探究する活動を行っている。
各地で開かれるお話し会で「サドベリー教育」について講演し、多様な学びを広げる活動を行っている。目標は「不登校」という言葉をこの世からなくすこと。
ブログ「おはなしワクチン」 https://ohanashivaccine.wordpress.com/
一般財団法人東京サドベリースクールWebサイト http://tokyosudbury.com/
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