EVENT REPORT

Aug 2021

“本当に戦えるリーダー”になるには

大きな変革の時代。この時代を企業が勝ち抜いていくためには、組織やビジネスモデルの改革が必要となる。そしてその改革には、どんな時も冷静さを保ち、毅然とした対応を取ることができるリーダーが必要だ。
今回のWAOでは、㈱経営共創基盤(IGPI)の木村尚敬氏を迎え『本当に戦えるリーダー』になるために必要なスキルとは何かを学んでいった。

日本企業の傾向

日本企業の傾向

木村さんの所属する㈱経営共創基盤は、かつての金融再生プログラムの目玉政策の一つとして2003年に設立した日本初の国営ファンド・産業再生機構が前身となっている。主要なメンバーが、長期的持続的な企業価値・事業価値向上へハンズオン型の経営支援を行う事を企図して2007年に設立。木村さんはこれまでに中小企業から大規模企業まで、主に製造業を中心に成長戦略やターンアラウンド戦略の構築、更にその実行から成果創出にわたるまでを手掛けてきた。
今回は様々な企業とお付き合いをしてきた立場から、まずは日本が置かれた環境の変化と日本企業の傾向、後半はその中で求められるリーダーシップについてお話しいただいた。

「突然ですが、皆さんの会社で決裁プロセスにおいて押される判子の数はいくつでしょうか?おそらく実際の捺印者ではなくても、通す上では事前に話をしておかないとまずいという方がたくさんいると思います。そのために必要なのが調整・根回し・段取り(以降CND)。組織は機能ごとに役割分担がされているため、組織間をまたがる事象においてCNDは必要で、これ自体が悪いことではありません。しかし日本企業は“いかに円満に終わらせるか”ということが重要視されている、非常に内向きなCNDが多く、そこに些か問題があります」。

次に木村さんは国内・海外メーカーの過去40年間の変遷として、売上高と営業利益率の関係をプロットしたチャートを投影。大きな傾向値として、日本を除く高収益を実現している海外勢は売り上げ・営業利益率ともに伸長(増収増益)傾向。一方日本は売り上げは増加するも営業利益率は低下(増収減益)傾向で、外国勢の利益率の平均値が14%程度なのに対し、日本は6~7%。多くの企業が3~5%の間を持続的低収益で横滑りしていることが読み取れる。

「多くの日本企業が下から積み上げながら物事を決めていくボトムアップ経営です。これは丁寧で合意形成がしやすい反面、時間がかかる上にその過程でとがった意見がまとめられ、緩慢で丸い意思決定になりがちです。また、ボトムアップ型はすり合わせが上手くなっていきます。阿吽の呼吸で空気が読めるためコミュニケーションストレスはとても低く効率的ですが、同質化傾向が強くなります。そして本社主導で物事を決めていくことが非常に多い」。

実はこれらの特徴は40年前も同じだったそうだ。40年前といえば1980年台、日本がバブル絶頂期で圧倒的経済大国だった時代。当時世界中の企業の時価総額ランキングTOP10に日本企業は6社も入っていたが、今はゼロ。TOP50にトヨタ1社のみだ。つまり日本は同じやり方で天下を取り、そして同じやり方で凋落してしまったわけだが、激しい環境変化に従来型の日本経営は対応できるのだろうか。

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“本当に戦えるリーダー”になるには

木村 尚敬

㈱経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー) マネージングディレクター

ベンチャー企業経営の後、日本NCR、タワーズペリン、ADLにおいて事業戦略策定や経営管理体制の構築等の案件に従事。IGPI参画後は、製造業を中心に全社経営改革(事業再編・中長期戦略・管理体制整備・財務戦略等)や事業強化(成長戦略・新規事業開発・M&A等)など、様々なステージにおける戦略策定と実行支援を推進。
IGPI上海董事長兼総経理、モルテン社外取締役、りらいあコミュニケーションズ社外取締役
Japan Times ESG推進コンソーシアム アドバイザリーボード
慶應義塾大学経済学部卒、レスター大学修士(MBA)、ランカスター大学修士(MS in Finance)、ハーバードビジネススクール(AMP)

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