EVENT REPORT

Mar 2020

ナイトタイムエコノミーの変化によって生まれる新市場

インバウンドをはじめとした観光需要の取り込みにおいて注目されるナイトタイムエコノミー。しかし、ナイトタイムエコノミーを活用した夜の消費活動の活性化とまちや文化の共存のためには様々な課題が考えられる。
今回のWAOでは、観光庁と共にナイトタイムエコノミー政策に取り組んでいる齋藤貴弘さんをお迎えし、ナイトタイムエコノミーについての理解を深めていくとともに、新たに生まれるビジネスチャンスや、これからの都市開発やまちづくり、観光に必要なことは何か考えていった。

観光消費の“伸びしろ”

観光消費の“伸びしろ”

2016年、夜12時以降の遊興(=エンターテイメント)が禁止されていたナイトクラブの営業規制緩和を目的に風営法改正がおこなわれた。これをきっかけに、夜の時間帯にどのような市場を創出していけるのかという“時間市場”開拓を目的としたナイトタイムエコノミー議員連盟が発足された。

インバウンド観光の分野でも、日本はとりわけ夜の娯楽が少ないという課題もあったことから、2018年度からは観光庁が中心となり、ナイトタイムエコノミーの調査事業とモデル事業がおこなわれている。齋藤さんは弁護士という立場で風営法改正を主導し、ナイトタイムエコノミー議員連盟のアドバイザリーボードメンバーとして政策提言にもかかわってきた。

「日本の場合、風営法改正から話が出てきたせいか、ナイトタイムエコノミーというとナイトクラブと結びつけられがちなのですが、観光庁では、それだけではなく地域創生や地方の活性化と結びつけて考えています。具体的にはインバウンド政策や体験型コト消費の場としての掘り起こし。また、夜は色々な文化が生まれるところでもあり、コンテンツ産業との親和性も高いのではないかという観点から議論をおこなっています」。

いまでは、巨大市場として成長した観光市場。しかし、観光客の主な消費となる宿泊、飲食、買い物、交通、娯楽・サービスのうち、娯楽・サービス費の占める割合は観光先進国と呼ばれるアメリカやフランスが約10%強なのに対し、日本は約2.5%と非常に少ない。齋藤さんはこの結果を「伸びしろ」があると話す。

「日本の昼はコンテンツが豊富にあるので、そこで新たな観光資源開発をしようとすると既存のコンテンツと競合してしまう。しかし、まだコンテンツが十分でない夜であれば新たな観光消費の“伸びしろ”があるのではないかということです。コンテンツの拡充以外にも、場や夜間交通の整備、安心安全の確保、民間との連携や自治体を巻き込んだ推進の仕組みといったところも含めて、観光庁を中心に今まさに政策展開しているところです」。

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ナイトタイムエコノミーの変化によって生まれる新市場

齋藤 貴弘

一般社団法人ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事 / ニューポート法律事務所パートナー弁護士

2006年に弁護士登録の後、勤務弁護士を経て、13年に独立。16年にニューポート法律事務所を開設。個人や法人を対象とした日常的な法律相談や訴訟業務を取り扱うとともに、近年は、風営法改正を主導するほか、ナイトタイムエコノミー議員連盟の民間アドバイザリーボードの座長、夜間の観光資源活性化に関する協議会の委員を務めるなど、各種規制緩和を含むルールメイキング、新規事業支援に注力している。著書に『ルールメイキング: ナイトタイムエコノミー』で実践した社会を変える方法論」がある。

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