EVENT REPORT

Dec 2018

既成概念にとらわれない新事業のつくり方

事業の立ち上げで大切なのは“熱源”と“ビジネスモデル”

事業の立ち上げで大切なのは“熱源”と“ビジネスモデル”

事業の立ち上げで大切なのは“熱源”と“ビジネスモデル”

続いて、事業を始めるにあたっての参考にと、森山さんが創業期に大切にしていた2つのことを紹介してくれた。

一つ目は、創業期にはなによりも大事となってくる「原点となる思想や熱源」だ。

森山さんいわく、基本的にベンチャー企業や創業というものは、今ないものを生み出すため、その時点では世の中にとって絶対必要なものではない。そのため、なにをおこなうにしても問題しか起こらないという。

「前提となる『なぜそれをやるのか』という熱源がない限り絶対にクリアできないです。僕の場合は1年がかりで、“世界の営み”を変えたいという熱源をもとに“Style for Earth”という壮大なビジョンをつくりました」。

二つ目は、「ビジネスモデルとして成立するか」だ。いくら熱源があっても、ビジネスに還元できなければなければ実現はできない。収益がどうすれば出るのかということも徹底的に考える必要があるという。ただ、創業当時に掲げたビジョンも、描いていたビジネスモデルも、現在のCRAZYのものとは異なっている。これはどういうことなのだろうか。

「創業期に考えていたものと今が違うというのがポイントです。ビジョンは、新しく入った取締役に『わかりにくい』と言われたのがきっかけで変えました。『ビジョンはなんのためにあるのか』という本質的な問いを深めていくと、ビジョンというのは人を束ねたりドライブしたりするためのツールだと気づきました。そこで、少しタイムスパンを短くして、創業7年目に入った今年に“世界で最も人生を祝う企業”とビジョンを変更しました。そこから“祝う”ということを起点に事業戦略や経営リソースをしっかりと考えられるようになりました」。

ビジネスモデルに関しても、創業期は現在評価されているクリエイティブやオーダーメイドウェディングを売りにしていたわけではなかったという。

「創業期にどれだけ考え抜いていても、結局は市場に合わせてヒットさせていかなければなりません。そのプロセスの中でも常にビジネスとして成立させながら、情熱を失わないやり方をしないといけないので、創業や新事業の立ち上げは、ものすごく非合理的です。だから『合理的にやろう』とか、『こうやったらうまくいくんじゃないか』と考えながら新事業をやると失敗します。なぜならそれでは独りよがりで、市場が求めているところまで昇華させるのが非常に難しいからです」。

熱源はそのままに、常にフラットに物事をとらえ、必要な部分を柔軟に変化させる。冒頭で大事だと語ったことを、森山さん自身が先頭に立って体現しているからこそ、それがCRAZYの文化となり、社員や会社の成長に結びついているのだ。

“安定”はあっていい。大事なのは“挑戦”すること

“安定”はあっていい。大事なのは“挑戦”すること

“安定”はあっていい。大事なのは“挑戦”すること

森山さんの講演後、会場との質疑応答が行われた。そのなかで「新しいモノやコトを興そうと思っても、“安定”というものが頭をよぎってしまい、森山さんのように振り切った考えや行動に移れないと感じた」といった声があった。それに対し、森山さんはこう答えてくれた。

「“安定”って、別に悪いことではないですし、すごく大事なことだと僕も思っています。大事なんですが、その上に乗せるという方法もあるということを考えた方がいいと思うんですね。確かに安定していない方が力を出せる“可能性”はありますが、逆に安定を力にして成功している人もいます。こういう事例を聞いているとついつい『あの人は特別だから』と考えがちですが、そんなことはないです。『大企業にいるとできない』『安定があるとできない』といった二元論で考えているうちはできないと思います。それよりもっと大事なのは“挑戦すること”です」。

CRAZYを立ち上げる以前はコンサルティングの会社に勤めていたという森山さん。創業せずとも、大企業に属しながら新しいことは興せるという力強いメッセージをいただき、今回のイベントは終了した。


<Dec.2018 鈴木 潤子(WAO事務局)>

1

2

既成概念にとらわれない新事業のつくり方

森山 和彦

大学卒業後、新卒で勤めた人材コンサルティング会社在籍中に「世界の問題を解決したい」という思いにかられ、半年間答えを探し続ける。ある時「地球が喜ぶシゴトがしたい」というインスピレーションが湧き上がり、起業を決意し退職。世界を知るために毎日独学で世界経済から、環境問題、国際問題などを徹底的に調べる日々を過ごした。その後、世界放浪期間を経て2012年7月に株式会社UNITED STYLE(現CRAZY)を創業。
経営の第一優先を健康とし、毎日手作りの自然食を提供する他、全社員で世界一周旅行を行うなどユニークな経営を実施。最近では、日本初の睡眠報酬制度の発案・導入で世界各国のメディアからそのユニークな経営手法が注目を浴びる。2018年「働きがいのある会社」及び「働きがいのある会社 女性ランキング」初エントリーにてダブル受賞を果たす。

◆株式会社CRAZY
https://www.crazy.co.jp/

◆CRAZY WEDDINGが手がける新サービス 『IWAI OMOTESANDO』(2019年2月オープン予定)
https://iwai-crazy.jp/

OTHER ARTICLE

このカテゴリの他の記事

最先端ITが農業の未来を変える

REPORT

最先端ITが農業の未来を変える

人とロボティクスの未来
AI×ロボットによる新たなマーケティング手法を探る

REPORT

人とロボティクスの未来 AI×ロボットによる新たなマーケティング手法を探る

ナイトタイムエコノミーの変化によって生まれる新市場

REPORT

ナイトタイムエコノミーの変化によって生まれる新市場