EVENT REPORT

Jul 2017

世界が夢中になる「ラーメン」

「食」を通じて、日本文化を伝える

2008年のニューヨーク「IPPUDO NY」の初出店から始まった「一風堂」の海外展開。いまでは海外に66店舗(2017年4月現在)を展開するまでに拡大している。

「一風堂」は、なぜこれほどまでに海外で支持されているのか。その理由は、主に3つあると関口さんは話してくれた。

 1、日本発ならではの「おもてなし」
「一風堂」では、日本の「おもてなし」の精神をそのままに、海外でも現地のスタッフと共有、浸透させ、高いサービスレベルを実現している。たとえば、海外の店舗でも日本語で「いらっしゃいませ」と大きな声でお客さまを出迎えている国もあり、「いらっしゃいませ」という言葉は、お客さまにも喜んでいただき、手を挙げて反応してくれる人もいるほどだという。

 2、日本と現地が融合した商品とスタイル
「一風堂」では、食材・品質・味に妥協せず“本物”のラーメンを提供している。各拠点で日本の味をベースに、味覚においては、国ごとの好みや特性もあるため、地域の気候やトレンドに合わせて油分や塩分を細かく調整するなど、ローカライズも怠らないという。また、味だけではなく、日本人のように麺をうまくすすれない人のため、麺の長さを短くしたり、麺を乗せてスープと一緒に食べられるようにレンゲの大きさを変えたりと、試行錯誤を重ねている。

 3、日本食「ラーメン」への注目度
訪日観光客が日本食で満足した料理のランキングで、ラーメンは寿司、てんぷらと並ぶ日本食の代表として浸透してきた。そうした人気の後押しもあって、海外でのラーメン店の出店は年々拡大している。海外におけるラーメン市場の競争が激化し、お客さまの選択肢も増えるなか、「一風堂」のラーメンは“本物”として選ばれているようだ。

海外で注目される日本のラーメン文化。こうした背景のなか、「一風堂」では、ラーメンという枠を超え、日本の食文化の発信にも注力していると関口さんはいう。

「私たちは、『Japanese wonder to the world』というキーワードを掲げ、海外展開をおこなっています。『Japanese wonder』が意味するのは、“日本文化の魅力や面白さ”であり、1つの表現方法として飲食店という手法で、それを世界に伝えていこうとしています」。

日本文化を伝えていくために、飲食店という手法は、海外では理解しやすいと、関口さんはいう。日本食を提供するだけでなく、店舗のデザインやスタッフのおもてなしなど、さまざまな角度から日本文化を表現することができるというのだ。

ブランディングの鍵は店主たち

ブランディングの鍵は店主たち

ブランディングの鍵は店主たち

現在、「一風堂」を経営する力の源ホールディングスでは、ラーメン以外にもそば、うどん、レストランや居酒屋も展開し、年々ブランドを拡大している。

一方で、「店舗数が増えていくことによって、ブランドが陳腐化していくのでは」との意見があがるが、関口さんはこう答える。

「私たちは店舗数が増えれば、お客さまとの接点も増えていくので、ブランド価値を向上できる機会が増えていくと考えています。ただ、お客さまとの接点が増えるだけでは価値は向上しません。そのなかで大事になってくるのは、地域コミュニティに根差した活動や地域独自の商品開発に取り組んでいくことだと思います。そして、その鍵となるのが、社内から独立し、暖簾分けした『店主』というリーダーの存在です。私たちは、チェーンであり、チェーンではない個店化、つまりは、店舗ごとに独自性を持つ“究極の個店化”を目指しています」。

「一風堂」では、究極の個店化の実現のため、店舗・地域を巻き込める人材育成にも力を入れている。また、社外からも、「一風堂」を経営してくれる経営者を募集し、今後は、「100人の経営者」をつくることを目標として取り組んでいく予定だ。こうした活動によって、「自分たちの経済圏や地域コミュニティを自分たちで創っていきたい」と、関口さんは話す。

地域に根差した活動は、店舗だけの取り組みではない。力の源ホールディングスでは、地域の小学校に食育出前授業をおこなっている。

「食育出前授業は、現在約400校、約35,000人の子どもたちに展開しています。この活動は、『一風堂』の創業者である河原の想いが起点になっています。河原がなぜ飲食業を始めたかといえば、小学生のころ家庭科の授業で料理を褒められたという経験があり、そのときの嬉しさがいまの飲食業につながっている要因でもあります。こうした幼少期の原体験を大切にしたいという想いと、地域コミュニティに根ざしていくという想いから、食育の活動を続けています」。

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世界が夢中になる「ラーメン」

関口 照輝

株式会社 力の源ホールディングス 社長室 兼 人事・総務本部。大学時代、「一風堂 池袋店」、ニューヨークの「IPPUDO NY」のオープニングスタッフを務める。大学卒業後、新卒で大手小売業、広告の企画営業等を経て、2016年に力の源ホールディングス入社。社内外へのブランディング業務を中心に、各種イベント活動、WEBサイト構築や、人事として新卒採用を担当。小学生の時からラーメンの食べ歩きをスタートさせた、生粋のラーメン好き。

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