EVENT REPORT

Jul 2017

科学者集団リバネスのイノベーションを起こすしくみ「科学を知り、ビジネスを創る方法」

科学教育事業会社が養豚事業をやってみた

科学教育事業の原体験から、リバネスでは、“自分は何がやりたいのか”という想いを、社員それぞれが自分自身に問いかける企業文化が形成されていった。そして、その企業文化は、新たな事業の創出につながっていく。

高橋さんは、そのなかの事例の一つとして、養豚事業の話をしてくれた。

「リバネスでインターンをした一人が、数年後に『リバネスに戻ってきたい』と電話をかけてきました。そこで、彼に『Q』と『P』を尋ねてみると、『養豚で地域を活性化する商品開発をしたい』と話してくれました。彼は3年間養豚の会社で働いていたのですが、もっと生産者と消費者がつながり、食に対するこだわりをきちんと伝えていきたい、という想いを抱えていたんです」。

これまで科学教育事業をおこなってきたリバネスにとって、養豚事業は完全な新領域。しかし、この新たな事業実施の判断が、リバネスの一つの分岐点になったと高橋さんはいう。

「普通に考えれば止めますよね。せめて『養豚”教育”事業』ですよ。でも、その判断をしては駄目だと思いました。なぜならば、彼には『Q』と『P』があったのですから。やらない理由は沢山ありましたが、それでも『やろう!』という判断をすることは、新規事業立ち上げの重要なキーになると考えています」。

養豚事業は、立ち上がった後も様々な苦難があったという。しかし、担当者の「Q」と「P」の想いによって、諦めずに継続の方法を模索した結果、エコフィード(食品残さ等を利用して製造された飼料)のコンサルティングや、豚以外の畜産への展開、飲食事業への拡張を経て、現在では黒字化しているという。

「新規事業は向かい風だらけです。そのなかでも踏ん張れる課題意識や情熱を持っていることが重要だと考えています」。

日本のあらゆる研究を網羅した最強のシンクタンクへ

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研究者としてのキャリアを持つ高橋さんは、産官学連携の難しさを身に染みて感じている。

「国の研究費は大学に入りますが、実際に現場で研究をしているのは大学院生たちです。しかし、大学院生は学生扱いであり、国から見ると研究者ではありません。つまり、最も研究活動をしている若手研究者たちが活躍する仕組みが無いのです」。

こうした課題の解決をはかろうと、リバネスでは、若手研究者のテーマを拾い上げ、企業とマッチングして研究費を支給する、産学連携システム「リバネス研究費」を構築した。現在、登録研究者2700名、受賞研究者約200人に総額1億円を支給する規模のプラットフォームに成長している。

さらにリバネスは、グループ企業と連携して、国内の研究を見える化すべく「日本の研究.com」を開設。しかし、ここに掲載されるのは国の研究予算を持つ研究に限られ、全体を見える化するには足りないと感じたリバネスは、新たに「L-RAD(エルラド)」という“研究費予算がつかなかった”未活用の研究アイデアと企業をつなぐプラットフォームを構築した。

「日本の科学研究費は年間約2,000億円の予算があります。これに対して、約10万件の研究テーマが申請されますが、その中で採択されるのは3分の1に過ぎません。不採択となった3分の2のアイデアは、日の目を見ないのです。アカデミックな視点で不採択になったとしても、ビジネス視点で見れば面白いネタがあるのではないかと考えた私たちは、そうした申請で不採択となったアイデアと企業をつなぐオープンイノベーションプラットフォーム『L-RAD』の構築を進めました」。

この「L-RAD」でも、ポイントとなるのは研究者の「Q」と「P」である。「L-RAD」に登録される研究テーマは、”国から不採択になったとしても継続したい”という強い想いを持つ研究者が、自ら登録することによって、蓄積されていくのだ。既に、研究者の「Q」と「P」と企業の興味をマッチングすることで、成功事例が多数生まれていると、高橋さんは説明してくれた。

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科学者集団リバネスのイノベーションを起こすしくみ「科学を知り、ビジネスを創る方法」

高橋 修一郎

株式会社リバネス代表取締役社長COO。東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了 博士(生命科学)。
設立時からリバネスに参画。大学院修了後は東京大学教員として研究活動を続ける一方でリバネスの研究所を立ち上げ、研究開発事業の基盤を構築した。さらに独自の研究助成「リバネス研究費」や未活用研究アイデアのデータベース「L-RAD」のビジネスモデルを考案し、産業界・アカデミア・教育界を巻き込んだオープンイノベーション・プロジェクトを数多く仕掛ける。2010年より代表取締役に就任。
株式会社リバネスWebサイト https://lne.st/

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