EVENT REPORT

May 2017

「デザインシンキング」を学ぶ

デザインシンキングを組織に浸透させるためには?

デザインシンキングを組織に浸透させるためには?

デザインシンキングを組織に浸透させるためには?

イベントでは、P&GやSAPといった、デザインシンキングをうまく取り入れて、成功している企業の事例を紹介してくれた。そして、こうした企業のように組織にデザインシンキングを浸透させ、イノベーションを起こしていくために必要となる以下の3つの要素についてスズキ氏は述べた。

①スキルセット
必要なスキルセットは、前段でも述べた 「ユーザー理解のスキル」、「素早く手を動かし、プロトタイプを作るスキル」に加えて、「アイデアをコンセプトに落とし込む力」と、「チームでのファシリテーション力」が必要であるという。

「プロトタイプは、ただ素早くアイデアを形にするだけではなく、学術的・科学的に、なにをユーザーに検証すべきかを抽出し、その部分をプロトタイプとして見せ、検証することが必要です。そして、調和を大事にする日本人が得意としているのが、チームのファシリテーションのスキル、チームワークです。しかし一方では、衝突を避けるが故に、意見を戦わせない場面も見られます。建設的な議論はプロジェクトにはつきものなので、ある程度の衝突は必要であるとの理解も必要でしょう」。

②マインドセット
マインドセットに関しては、考え過ぎて行動に移れなくならないように気を付けることが必要だという。アクションを妨げるバイアスは持たないこと。「まぁやってみようか!」というマインドで、プロジェクトに臨むことが大事であるとスズキ氏は指摘する。

「多くの学生を見てきましたが、プロジェクトで力を発揮できるプレーヤーは、とても好奇心旺盛です。このような人は、新しいことを学んでみたいといつも思っています。ユーザーに対しても、どのような生活を送っているのか、自分たちのアイデアをどのように受け取り、感じるかなど、プロトタイプを作りながら、知りたいと思ったことを、どんどん確かめていきます。そして、好奇心と共に、楽観的なマインドを併せ持っていることも重要です。悲観的過ぎると、チームのアイデアを否定し過ぎたりすることもあります。仮説検証の姿勢でプロジェクトに臨むことは重要ですが、必要以上に悲観的だと何も進みません」。

③デザインシンキングが根付きやすい文化づくり

デザインシンキングをうまく取り入れていくために、企業はどのような文化をつくり、どのような文化を排除すべきなのだろうか?スズキ氏は、日本人の特徴を交えながら、いくつかポイントを紹介してくれた。

「日本でまず課題となるのは、失敗に対する恐怖感をどのように取り去るかです。恐怖感があると、アイデアを試すステップに進めません。失敗にも色々あります。レストランのオーダーや、宅配便の届け先を間違えるような失敗は、やってはいけない失敗です。しかし、新しいものを作って試してみる時には、失敗はつきものであり、それを許容する文化が必要となります。どのような失敗なのか、失敗のタイプを分けることが必要です。そして、失敗から学び取り、検証できた内容を次につなげることが重要です。文化については、一朝一夕ではつくられないものでもあります。しかし、変えていく努力をしないと進展はありません」。


昨今、デザインシンキングという言葉が独り歩きしている風潮があるが、より効果的に活用し、イノベーションを起こすには、デザインシンキングの実践に必要な3つの「P」と、組織にデザインシンキングを浸透させる3つの要素を掛け合わせることが大事であるとスズキ氏は教えてくれた。


イベント終了後、参加者からは、「まずは自分自身の“やってみる”というマインドセット作りを心掛けたい」、「日本人の弱点を意識して、自分やチーム内のプロジェクトの進め方にデザインシンキングを取り入れていきたい」、「文化をつくっていくために、何がでできるのかを考えたい。」といった感想が多く寄せられた。

関連記事:PROJECT ~デザインシンキングを体験する~ 2020年に向けたコミュニケーションを再定義せよ


<May.2017 吉村 祐子(WAO事務局)>

1

2

3

「デザインシンキング」を学ぶ

スシ・スズキ

京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab 特任准教授。
スタンフォード大学で、デザインシンキングを学び、大学院終了後、同大学の産学連携プログラムME310のプログラム・ディレクターや、パリでのd.schoolの 設立に従事。ビジネス領域でも、Panasonic Europe のイノベーションチームの立上げや、日系ベンチャー企業、ドイツ企業の製品コンセプト開発に携わる。大学で教える傍ら、SLUSH Tokyo や、Startup weekend Kyotoなどのスタートアップイベントを精力的にサポートしており、グローバルに活躍できる若手起業家の教育にも力を注いでいる。

 http://www.d-lab.kit.ac.jp

OTHER ARTICLE

このカテゴリの他の記事

<コミュニケーション×テクノロジー>が
一次産業の未来を変える

REPORT

<コミュニケーション×テクノロジー>が 一次産業の未来を変える

元ギャルママ雑誌カリスマモデルを“子育てアドバイザー“へと転身させた「育児を取り巻く課題」とは

REPORT

元ギャルママ雑誌カリスマモデルを“子育てアドバイザー“へと転身させた「育児を取り巻く課題」とは

若者の感性から未来をデザインする方法(後編) ~若者起点の価値創造~

REPORT

若者の感性から未来をデザインする方法(後編) ~若者起点の価値創造~