文系でも分かる!AIの最新動向
今日から使える!AI実践
社会実装の流れ
様々なトピックスが挙がる研究的な発展の流れとは別に、最近では、社会実装への流れも強くなってきている。特にここ1、2年で、生産性向上や業務効率化などのAIの進化が激しいという。
「キーワードとしては、『MLOps』が挙げられます。AIの焦点が研究から開発と運用に移動してきました。そのAIや、その脳みそである機械学習の開発と運用を指す言葉がMLOpsです。AIには、計算機ソフトだけでなく、データやモデルといった要素も関連するので、これらを総合的にマネージメントしないといけません」。
例えば、ITシステムとAIシステムをつくろうとする際、ITシステムは「仕様設計し、システムを構築し、運用する」という流れであるが、AIシステムでは、何を学んで、何をアウトプットするのかを考えたり、AIのモデルを学習するなど、さまざまな工程でトライ&エラーを繰り返すことが多い。このため、事前に費用、時間を見積もるのがITシステムに比べ、困難である。さらにITシステムに比べるとデータやモデルを保持するなど、管理するものが多く、全体システムをどうやって運用していくかについては、いまだ明確な答えがない。
瀬々さんは、AIを社会実装していくにあたって、AIビジネスの常識として捉えておくべきことを教えてくれた。
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・5W2Hを考える。
通常の5Wに加えて、How much、How manyが重要。いくらかかるのか、どれだけのデータを集められるのか。こうした要素を考えてプロジェクトをスタートすることが大切。
・AI導入はデータビジネスのスタート地点
かつては、AIを導入すれば何でもできるとゴールのように誤解されていたが、AI導入はデータビジネスのスタート地点である。構築後のAIが活用され、さらに問題点を改善したAIの構築へと進むサイクル構築が重要である。
はじめに考えた最終形態に囚われすぎず、スモールスタートをして、データを集め、モデルを学習し、その後、そのモデルを運用するというサイクルをひたすら繰り返すことが重要となる。
・AIビジネスの真の勝負は集まったデータの二次利用
AIサービスを進めていくとデータがたくさん集まってくる。この集まったデータを二次利用してサービス改善やコスト削減につなげるところまで考えられると、AIビジネスは発展していく。
例えば弊社の場合は、新しい健康計測機器を利用して、顧客に健康アドバイスを提供しつつ、集まったデータから、世の中にあまり存在しない“健康な人のデータ”を流通させるビジネスを行っている。
・AI構築がうまくいかない場合もある
データ収集、AI構築、AIのメンテナンス、実際構築してみたAI精度の未達など、一連のプロセスを考えた時、得られる結果とその開発コストが見合わないこともある。その場合は、AIに固執せず、ITシステムを組むことも考えた方が良い。本来、そのプロジェクトで達成したい目標が何であったのか?が一番重要であり、AIはその一手段にすぎない。
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瀬々 潤
1976年生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科博士(科学)。東京大学助手、お茶の水女子大学・准教授、東京工業大学・准教授、産業技術総合研究所・研究チーム長を歴任。2018年から現職。産業技術総合研究所人工知能研究センター招聘研究員や、東京医科歯科大学 特任教授などを兼務。
専門分野 は、機械学習・数理統計の手法開発および生命科学の大規模データ解析。
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