今、モノづくりの価値をあらためて考える
意識を高く持ったモノづくりを
それからというもの、アンビエンテックは、これまでにないコンセプトとデザインによるオリジナル製品を次々に発表。
念願だったミラノサローネにも出展。今では「自分は一生照明で仕事をしていくんだと自信を持って言える」と話す久野さんは、自身のモノづくりのこだわりについてこう語った。
「モノづくりには誠実さと高い意識を持つことが必要。分かりやすく言うと自分の家族に薦められない食べ物をつくるようなことはしてはいけませんよね。それに、モノをつくるということは資源を消費することです。そこでもしゴミになるようなものをつくってしまったら、個人がストローやビニール袋を節約するというレベルとは比べものにならないほどの規模で資源を無駄にするわけです。ですから買い手も、買うものを真剣に選ぶべきだと思いますし、提供する側はもっとシビアな目をもって世の中にものをおくり出すべきだと思っています。だから私たちの会社では本当に品質やつくりにこだわって、10年20年、できれば一生使ってもらえる製品だけをつくっています。要はつくる人も買う人も、もう少し考えてみてもいいんじゃないかなというのが今の僕の考えですね。買うという行為自体を楽しむのではなくて、もう少しその行動に対して責任を持ってほしいなという気はすごくします」。
久野さんの言うように、世の中の購買行為は劇的に変化した。どんなものもボタン一つで簡単に手に入るようになり、その分身の回りに不必要なものが増えていくという経験がある人も多いだろう。
「普段使うコップ一つにしても、すごく悩んで選んで決めたものというのはたぶん長く使いますよね。そうやって悩んだ末に最後に選んでもらえるものをつくろうと思うと、本当に買う側もつくる側も真剣勝負にならざるを得ない。僕はこれからも、そういう選択肢の一つになるものにこだわってモノづくりを続けていきたいと思います」。
<Jan.2020 鈴木 潤子(WAO事務局)>
今、モノづくりの価値をあらためて考える
久野 義憲
(株)アンビエンテック 代表取締役社長
1969年愛知県名古屋市生まれ。愛知大学卒業後、㈱プラザクリエイトに入社。香港駐在、フィルム映像のデジタル化に向けた新規事業等に関わる。
同社を退職後1999年に設立した㈱エーオーアイ・ジャパンで水中撮影機材のOEM事業を大手カメラメーカー向けに開始。2009年には㈱アンビエンテックを設立し、コードレス照明ブランドとして製品展開を始める。
現在は水中撮影機材で培った独自の蓄電式LED制御技術と防水技術を強みとして、ダイビング用水中ライトの“RGBlue”、インテリア照明ブランドの“ambienTec”という対極ともいえる業界で本格的照明機器のグローバルブランドを目指すことをライフワークとしている。
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