地図×デジタル
~災害マップにデジタルを掛け合わせた理由~
ドローンによるクライシスマッピングの今後の課題
被災地でのドローン活用にあたっては、課題もある。
2018年西日本豪雨災害の際、古橋さんたちが災害医療分野で生死を分けるタイムリミットと言われている発災後72時間以内に被災地空撮を行えたエリアは、真備町と芦屋市の2自治体。一方、広島県と香川県では発災後8日でドローン飛行の自粛要請が出されていた。
「航空法上、ドローン飛行にあたっては、国土交通大臣の許可が必要なため、飛行10日前までに申請をしなければなりません。また、この時広島県の自粛解除には1ヵ月かかり、僕たちがスケジュールを調整し実際に空撮できたのは発災から2か月後でした。ですが、事前に自治体と災害協定を締結していれば、航空法上の災害時の例外適用の団体として、災害直後にドローンを飛ばすことができました。この時の反省を生かし、迅速な空撮と自治体連携のため、現在では全国27自治体と災害協定締結を結んでいます(2019年5月時点)」。
ドローンの災害協定を結んでいる他の団体は、自治体に災害情報を納品するところまでで、一般市民はそのデータにアクセスすることができないことが多いというが、DRONE BIRDプロジェクトで収集した情報については、オープンデータとして誰でも見たり使ったりできるように2次利用を許諾している。
最後に古橋さんは、地図作りの先駆者である伊能忠敬の言葉を引用し、「続けることの大切さ」について語ってくれた。
「今後活動を続けるにあたっては、500万人の地図ボランティアの人たちをコミュニティとしてどう継続していくかが大事になってきます。大学という立場とNPOとしての立場、グルーバルなコミュニティや企業との連携も行いながら、模索しつつ進めていきたいと思います」。
古橋さんの講演の後は、会場の参加者と一緒にマッピング成果物の活用方法やOSMの取り組みについてディスカッションがおこなわれた。
古橋さんからは、「正確性を重視する国土地理院の地図と違い、OSMは迅速性に重きを置いている」との話があった。この違いに、デジタル化により、一般市民が地図づくりに参加できることのメリットと課題がうかがえる。
古橋さんは続けて、「OSMの信頼性については、使っている企業が保証すべきと考えています。現在OSM利用している企業は、OSMを活用しながら自社で正確性を補完しています。正確性については有償で対応すべき領域と思いますので、民間ボランティアの活動範囲とは別になってくるかと考えます」と、デジタル時代の企業と市民の共創や役割の在り方についても言及した。
その後も、会場からの質疑が相次ぎ、盛況のままイベントは終了した。
<July.2019 藤村 祥子(WAO事務局)>
地図×デジタル
~災害マップにデジタルを掛け合わせた理由~
古橋 大地
青山学院大学 地球社会共生学部 教授
特定非営利活動法人クライシスマッパーズ・ジャパン代表
1975年東京都生まれ。東京都立大学で衛星リモートセンシング、地理情報システムを学ぶ。2001年、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻修了。05年からマップコンシェルジュ株式会社 代表取締役を務める。地理空間情報の利活用を軸に、Googleジオサービス、オープンソースGIS(FOSS4G)、オープンデータの技術コンサルティングや教育指導を行なっている。ここ数年は「一億総伊能化」をキーワードにみんなで世界地図をつくるOpenStreetMapに熱を上げ、GPS、パノラマ撮影、ドローンを駆使して、地図を作るためにフィールドを駆け巡っている。
【災害ドローン救援隊DRONE BIRD紹介ムービー】
https://www.youtube.com/watch?v=Vu6a3DXZ1IM&feature=youtu.be
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