最先端ITが農業の未来を変える
経験と勘の農業から科学とテクノロジーを活用した農業へ
現在の農業は、“経験”と“勘”、“匠の技”で成り立っていて、新規就農のハードルが高い。
「農家の高齢化が進むなか、“匠の技”の技術は後継者に引き継がれずに消えていってしまいます。“経験”と“勘”や“匠の技”は、最新の植物科学に基づく“科学的根拠”とIoTやセンサーによる“計測”、ビッグデータやAIを活用した“システム”に転換・解析し、これまでの技術を伝承し、新しい栽培技術を開発していく必要があります」。
ベジタリアは事業持ち株会社として、農業IoTの会社を傘下に持ち、植物科学とテクノロジーを活用した農業を展開している。
植物科学の領域では、2016年に国家資格を有する「植物医師」を院長として、東京大学植物病理学研究室の協力を得て、民間で初めての植物病院を開設。
「実際には、植物医師は人数が少なく、すべてに対応するのは難しいため、植物医師の代わりにチャットボットでAIが診断するシステムも開発しています」。
テクノロジー領域では、ユーザーとして利用していた「フィールドサーバ」やクラウド型栽培管理システム「アグリノート」の開発会社を子会社化し、新たな投資をして研究開発を続けている。「フィールドサーバ」は、汎用的な農業用センサのほか、水稲用に特化したものや防災用のものなどがあり、全国累計5000ヵ所以上で稼働。植物の生体情報である樹液流センサの開発や植物生理の研究などもおこなっている。
「アグリノート」は、農作業の記録や情報共有ができるシステムだ。農機やドローンとの連携やGAP認証取得時の管理にも利用されており、全国約15万圃場が登録されている。このほかに全国で研究成果の仮説・検証および農業生産や加工を行うファームの運営もおこなっている。
「これからは環境センシングだけではなく、植物そのものを測る時代になります。例えば、生体情報の1つである樹液流を測る事で植物の健康状態や光合成量が分かり、例えば、水ストレスをコントロールすることで糖度の高い醸造に適したワイン用ブドウもつくることができます」。
また、小池さんは、国のプロジェクトや共同研究にも長年関わっており、特に農業の国家戦略特区である新潟市とは毎年様々な取り組みをおこなっている。最近では、水田の生育ムラをなくすため、ドローンを活用してセンシングと追肥を自動化する実証実験をおこなうなど、活動の幅を広げている。
最後に、小池さんから今後の企業の農業参入の可能性について語っていただいた。
「高齢化が進んで担い手不足のなか、農業を活性化していくためには、企業の農業参入は待ったなしになっていきます。これまでは、農地法で企業の参入に様々な制約がありましたが、規制緩和も進んでいきます。いまやICTは電気・ガス・水道と同じようにあって当たり前のもの。農業の企業参入と大規模化とともに農業分野でもICTの活用が必須になっていくでしょう」。
<Dec.2018 藤村 祥子(WAO事務局)>
最先端ITが農業の未来を変える
小池 聡
ベジタリア株式会社 代表取締役社長。
iSi電通アメリカ副社長を経てNetyear Groupを創業。1990年代は米国でベンチャーキャピタリストとして活動。
ネットイヤーグループ(株)創業者、(株)ネットエイジグループ(現ユナイテッド)前代表取締役社長。
社会人向けビジネススクール東京大学EMP修了後の2009年に食と農業に関心を持ち就農。
2010年ベジタリア(株)を設立。文部科学省「革新的イノベーション創造プログラム(COI)」ビジョナリーリーダー。経済産業省グローバルネットワーク協議会委員。東京商工会議所(渋谷)副会長。
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