EVENT REPORT

Jul 2018

台湾で人気No1の訪日観光情報メディア創設者が語る
~台湾のいま~

新規事業創出にむける想い

新規事業創出にむける想い

イベントの最後に、吉田さんは新規事業を考える際に大事にしている2つの考え方を教えてくれた。

1つ目は「中庸(ちゅうよう)」という考えだ。

「顧客の声を聴かなければ的外れなプロモーションが生まれるけれど、声を聞きすぎるのもだめだと思っています。特に日本では新規事業のファーストステップとしてデータ分析を始めますが、それで導き出される解が必ずしも正解ではないと思うんです。じゃあデータを取らなくていいのかというとそうでもなくて、儒教の考え方にある『中庸』というのを大事にしています」。

「中庸」という考え方は、儒教の教えの中で孔子が説いた説。どちらにも偏ることなく、常に平常でいるのが一番難しいということ。事業をやっていくうえでは、サイエンスとアートとクラフトの「中庸」をとっていくことが一番難しく、かつ一番大事だという吉田さん。科学的思考やデータドリブンが関わるサイエンスに偏重すると口だけのコンサルタントになり、そのプロダクトに感動や哲学があるかに関わるアートに偏重すると売れないアーティストになり、構想を現実にする経験を蓄積した技術に関わるクラフトに偏重すると頑固おやじになってしまう。そうしたことから、この3つの「中庸」をとることが新規事業では重要だという。

2つ目は「歴史という失敗と成功の蓄積に目を向けなければいけない」という考えだ。

「台湾も含め中国の方はよく『日本人は横に考える。中国人は縦に考える』 と言います。日本人は今ヨーロッパではこうなってる、アメリカではこうなってるっていうような、横で他国がなにをやっているかを気にするんですけど、中国の方ってそれは気にしないんですよね。むしろ気にするのは自分の国の過去に何があったかっていうのを縦に考えます。中国が宗教や麻薬に厳しいのは、過去に宗教や麻薬で国が滅茶苦茶になってしまったという過去があるからです。大学入試の際は過去問を解かれたと思いますが、歴史は先人が紡いだ過去問だと思います。横思想も大事なんですけど、歴史というのは人間が重ねてきた失敗と成功の蓄積ですから、もうちょっと日本人は縦に考えて歴史に目を向けるべきじゃないかと考えています。そして、そこに新規事業のヒントがあると思っています」。

吉田さんのトーク終了後、会場から多くの感想や質疑が交わされ、大盛況のうちにイベントは終了した。


昨今、デザインシンキングという言葉が独り歩きしている風潮があるが、より効果的に活用し、イノベーションを起こすには、デザインシンキングの実践に必要な3つの「P」と、組織にデザインシンキングを浸透させる3つの要素を掛け合わせることが大事であるとスズキ氏は教えてくれた。


イベント終了後、参加者からは、「まずは自分自身の“やってみる”というマインドセット作りを心掛けたい」、「日本人の弱点を意識して、自分やチーム内のプロジェクトの進め方にデザインシンキングを取り入れていきたい」、「文化をつくっていくために、何がでできるのかを考えたい。」といった感想が多く寄せられた。

関連記事:PROJECT ~デザインシンキングを体験する~ 2020年に向けたコミュニケーションを再定義せよ


<Jul.2018 小出 伸作(WAO事務局)>

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台湾で人気No1の訪日観光情報メディア創設者が語る
~台湾のいま~

吉田皓一

株式会社ジーリーメディアグループ代表。 奈良県出身。防衛大学校を経て慶應義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。 総合ビジネス局にてテレビ CM の企画・セールスを担当したのち退職。2013 年㈱ジーリーメディアグループ創業。台湾人香港人に特化した日本観光情報サイト「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」(2015年 日経優秀製品サービス賞 最優秀賞受賞)を運営する。中国語に堪能(漢語水平考試最高級所持)なことから、「台湾で最もFacebookファン数の多い日本人」として台湾にてテレビ番組やCM出演、雑誌コラムの執筆なども行う。日本国内においても、台湾香港インバウンド関連のセミナーに多数登壇。現在は東京と台北を往復しながら、日本の魅力の発信につとめている。

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