科学者集団リバネスのイノベーションを起こすしくみ「科学を知り、ビジネスを創る方法」
新規事業のステップは奇跡なのか、軌跡があるのか
アイデアが集まり、ぶつかり合うことで、様々な仮説が生まれる。そうすると、次に発生するのは、生まれた仮説を社会実装させていこうという動きであると高橋さんはいう。
「現在リバネスは、メディアに取り上げられる際に『シードアクセラレーター(事業を成長させる支援組織)』として紹介されます。このきっかけとなったのが、ミドリムシを使って世界中の食料問題やエネルギー問題を解決しようというバイオテクノロジーベンチャーの株式会社ユーグレナとの取り組みです」。
高橋さんと共にリバネスの共同代表である丸幸弘さんは、ユーグレナの代表取締役社長、出雲充さんと友人であり、ユーグレナ設立の前からディスカッションや実験を一緒におこなってきたという。
このユーグレナでの成功体験を体系化していくことで、次のテックベンチャーを生み出すことができるのではないかと考えた高橋さんたちは、「TECH PLANTER」というテックベンチャーを発掘・育成するエコシステムを構築した。これは、実用化に向けて芽を出す前の科学技術の「種」を持つ、研究者の「Q」と「P」を引き出し、会社設立前の上流側から社会実装に向けた実用化を支援していく仕組みである。
また、こうした上流側からの支援は、研究者だけでなく、企業の新規事業創出にとっても必要になってくると高橋さんは話す。
「最近、企業のなかでもオープンイノベーションという言葉をよく耳にすると思いますが、オープンイノベーションは、上流側にどれだけ行けるかが勝負だと考えています。Googleの検索にも引っかからない、誰も目をつけていないものに、どうやってたどり着くか。スタートアップのリストを見ていても、もう遅いんです。では、どのように上流側に関わっていくのか。私は『Q』と『P』だと思っています。合理性は無くても、それでも諦めない『Q』と『P』を持った所にしか、新規事業は生まれないと考えています」。
講演後は質疑応答が途切れることなく、大盛況のうちに終了した。参加者からは、「『Q』と『P』の重要性を改めて考える良い機会になった」「まずは自分のなかの『Q』と『P』を見直したい」「新規事業を考えるマインドとして非常に参考になった」など、多数の感想が寄せられた。
<May.2017 中澤亜希(WAO事務局)>
科学者集団リバネスのイノベーションを起こすしくみ「科学を知り、ビジネスを創る方法」
高橋 修一郎
株式会社リバネス代表取締役社長COO。東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了 博士(生命科学)。
設立時からリバネスに参画。大学院修了後は東京大学教員として研究活動を続ける一方でリバネスの研究所を立ち上げ、研究開発事業の基盤を構築した。さらに独自の研究助成「リバネス研究費」や未活用研究アイデアのデータベース「L-RAD」のビジネスモデルを考案し、産業界・アカデミア・教育界を巻き込んだオープンイノベーション・プロジェクトを数多く仕掛ける。2010年より代表取締役に就任。
株式会社リバネスWebサイト https://lne.st/
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