地図×デジタル
~災害マップにデジタルを掛け合わせた理由~
被災地で使える地図をつくる、デジタル時代のクライシスマッピング
古橋さんが災害時のOSM活用の可能性を感じたのは、2010年のハイチ地震発生のとき。発災前、ハイチではほぼOSMの登録がなかったが、発災後、約2,000人が現地に行かずにインターネット越しで地図を更新していったという。
日本にいる古橋さんたちは、NASAなどから入手した 人工衛星やドローンによる空撮データ、紙地図の情報などをもとに避難所を確認して入力し、国連や赤十字に現地の情報を報告した。
「災害発生時には、救助活動や支援物資の運搬ルート把握のために、現地の被災状況を踏まえた地図が一刻も早く必要になりますが、現地に赴いて一つ一つ状況を確認しながらでは膨大な時間がかかってしまいます。デジタルデータやツールを使い、遠く離れたところからでも世界中の人々が力を合わせることで、効率よく地図が作れることを実感しました。これをきっかけに、その後も各地で起こる大規模災害で、OSMを活用したクライシスマッ ピングをおこなっていきました」。
2011年の東日本大震災では、初めて被災地(岩手県の大槌町)にドローンを持ち込み、自分たちで空撮を実施。
2013年の伊豆大島の土砂災害では、発災当日には被災地の状況が分かる地図を作成し、デジタルマップだけではなく、紙の大判地図も出力し、現地の観光協会に張り出すことで、地元の人たちが状況を把握できるようにした。島外からボランティアが来た際も、この地図を出力し、状況把握のために利用されたという。
「2018年の西日本豪雨災害では、真備町を中心に、国土地理院から提供された浸水状況の地図や、現地にいたスタッからの写真、地元の人からの情報をもとに地図を更新していきました。ぼくたちの活動は、国境なき医師団や日本赤十字など現地の復興に携わる人々と連携しながら進めています。彼らが一刻でも早く、現場に行けるように地図を作成しています」。
迅速な対応が求められる災害時に、地図にデジタルを掛け合わせたOSMの仕組みは大きく貢献した。そして、こうした古橋さんたちの取り組みは地図の可能性をさらに広げていくことになる。
被災情報の迅速な確認にドローンを活用
災害時にすばやく正確な地図を作成するにあたって必要となるのが、現在の状態が分かる衛星写真などの空撮データだ。しかし、ヘリコプターや人工衛星によるデータを入手するには時間がかかってしまう。それを解決するのが、自分たちで撮影ができるドローンの活用だ。
「2015年からクラウドファンディングも活用し、災害時にドローン活用した迅速な地図づくりを支援する、災害ドローン救援隊DRONE BIRDプロジェクトを始動しました。2018年には、ドローンで撮影された航空写真を共有するためのプラットフォーム OpenAerialMap が完成し、現在約1万のデータが商用利用可能で公開されています」。
DRONE BIRDプロジェクトで公開された画像は、CC BY 4.0というライセンスを設定しており、クレジット表記さえすれば、自由に利用可能となっている。
「作成された地図は、被災地での復興活動にあたる、国連や国境なき医師団、社会福祉協議会等に渡すことを目的としています。クライシスマッピングにあたっては、発災後2時間での公開が目標です。具体的には、発災後1時間以内でドローンを飛ばし、さらに1時間以内でデータの後処理をして閲覧可能な状況を目指しています」。
地図×デジタル
~災害マップにデジタルを掛け合わせた理由~
古橋 大地
青山学院大学 地球社会共生学部 教授
特定非営利活動法人クライシスマッパーズ・ジャパン代表
1975年東京都生まれ。東京都立大学で衛星リモートセンシング、地理情報システムを学ぶ。2001年、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻修了。05年からマップコンシェルジュ株式会社 代表取締役を務める。地理空間情報の利活用を軸に、Googleジオサービス、オープンソースGIS(FOSS4G)、オープンデータの技術コンサルティングや教育指導を行なっている。ここ数年は「一億総伊能化」をキーワードにみんなで世界地図をつくるOpenStreetMapに熱を上げ、GPS、パノラマ撮影、ドローンを駆使して、地図を作るためにフィールドを駆け巡っている。
【災害ドローン救援隊DRONE BIRD紹介ムービー】
https://www.youtube.com/watch?v=Vu6a3DXZ1IM&feature=youtu.be
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